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第13話

とにかく今は夏休みの課題を決めなければ。

私は図書館に入り浸り、端から端まで舐めるように書棚を見ていく。


ドラゴンの生態調査は二年生以降にしようと決めた。

本当は一年生の内に取得しておいた方が、後々ステータスの遣り繰りに余裕が出る。

けれども今までの数か月でも、本来のゲームの流れとは違いがあり過ぎる。

すべて計算通りに行くことは無いだろうと踏んだ。

ならば可能な限り、手近から能力と新密度アップにいそしむまでだ。


夏休みの間はセラフィナ様に近付く手段は無いだろう。

会えない内に、悪役令嬢の運命にどう対応すべきか計画を練るか。

地道な喧伝けんでんに効果は出ていないようで、そうでもない。

いつの間にかセラフィナ様ファンクラブとして、アナベル、ビアトリクス、ロゼッタの三名が周知されることとなった。

ここで叫ぼう。推し活最高。

閑話休題。それはともかく

夏休みの間の計画について考えねば。

宿題は高得点を狙える題材での魔法書に関する感想文の提出に決めた。

これは二日あれば足りるので、夏休みに入る前から取り掛かってしまおう。

書き易いテーマは何だろう。

今なら治癒魔法についてかなあ。

この世界での怪我は治癒魔法で大体何とかなる。腕が千切れても足が取れても魔法でくっつく。

でも病気はそうはいかない。

治癒魔法を掛けたことによって病魔、これはウイルスとかそういうものに当たるんだろうけど、の活動が活発化してしまうパターンが多いというのがこの世界の常識だ。

授業でもそう習った。

その辺のことを踏まえて、魔法薬学を絡めてちょっと書きたいかなーと思ってはいるんだ。

面白そうな題名の本も見つけたし。

『治癒魔法の限界についての考察と一提案』

まだ目次だけしか目を通していないけれど、私の考えと似たようなことを書いてあるみたい。

まあ、私が考えるようなことは頭のいい人がとっくに考えてるよね。

そりゃそうだ。


本の貸し出し手続きを終え、講堂に向かう。

講堂ではなく、その途中にある学内掲示板が私の目当ての場所だ。

ステータス向上の為の訓練と金策を兼ねてのアルバイトを探すつもりだが、そういえば昨日は学内掲示板のチェックを忘れていた。

何か新情報が出ているかもしれない。

教員助手のアルバイトがあると、両方の意味で結構稼げるんだけどな。

そう簡単に進むわけないか。

張り紙をひとつひとつ指差し確認。

向こうに私と同じようなことをしている生徒を見つけた。

バートラムだ。

「こんにちは。アルバイト探しですか?」

「よう、元気そうだな。そんな所だ」

「貴方もいつもアルバイト探してますね。私も人のこと言えませんけど」

「本当だな。お前と会うのは大体が掲示板前か仕事先だ」

お互い肩を竦めて笑う。

敢えて会おうとしなくとも、中型以上のモンスター討伐先で鉢合わせること数度。

いっそのこと協定を組むか?と冗談まじりで提案されてもいる。

討伐協定というか、二人で組んで難易度の高いアルバイトを片付けるのはどうだろう、と。

新密度上がり過ぎるのはまずいけど、ステータス的には美味しいんだよね、その協定。

一応答えは保留にしてある。

「答えは出たか?」

タイムリーな問い掛け。勿論協定についてのことだろう。

私は首を振る。

「まだ迷っています。とても良い提案だとは思うのですが、必ずしもお互いの予定が合致するとは限らないでしょう。もっと簡単に連絡を取り合う手段なりあれば良いと思うのですが」

携帯電話とかさ。あればいいなって思うんだけど。

「伝書蝶はどうだ?」

「あれ、すごく高価じゃありませんでしたっけ?しかも一回使い切り。アルバイト代がまるっと消えますよ」

「……確かにな。本末転倒か」

伝書蝶というのは魔法道具アイテムのひとつで、手紙やメモを蝶の形にして相手に送る手段だ。

便利だし、勝手に相手の現在位置を検索して飛んで行ってくれるので、便利なことこの上ない。

しかし、一度使い切りの高値ときたもんだ。

いっぱい持っていたら本当便利だと思う。

……あれ?なんかそんなイベント無かったっけ。

伝書蝶が幾つも手に入るヤツ。

何だっけなー。確か一回だけ遭遇したレアイベントで。

ゲームでは連絡とかしなくていいから放って置いたんだけど……。

いざという時にあると便利だ。

思い出せないな。頭の片隅に入れとこう。

「偶然お会いした際に毎回丁度良い討伐先があるといいんですけどね」

「そう都合よくいかないだろ。……いや、そうでもないか」

バートラムが掲示物を指さす。

「これ、どうだ?期間はまだあるな。大蝙蝠の群の討伐だとさ」

「へえ、値段もまずまずですね。でもそうか、群なんですね。殲滅ではなく追い払うのでもいいのか」

「追い払うだけなら割と簡単に行きそうだが、戻って来ないように細工は必要だろうな」

糞害とか、果実荒らしとか、被害が結構出ているらしくバイト代は高め。

私は少し考えた。

「良い手段があるかどうか、図書館で調べて来ていいですか?害獣避けの魔法とか、忌避剤とかの知識が無いので」

「ん、了解。先に請けるって書類出しといていいか?キャンセルは何度でも可能だそうだ。止めたヤツ多かったのかな」

「なるほど、了解です。でも効果的な方法が見つからなかったらすみませんが、手を引かせて頂きたく」

「いいぜ。俺一人では多少手に余るが、お前が居なくても何とかなるだろ。たぶん」

適当過ぎないか、それ。

私はこめかみを抑えて首を振った。

「良い案を見つけて来ますよ。なんとかします」

バートラムはにこりと笑った。

「頼りになるな、特待生」

「伊達に首席張って無いんですよ」

にこりと笑顔を返して、私は図書館に戻る。


害獣駆除系統の書棚ってどこだっけ。農業系統の棚の辺りかな。

それとも生物の棚の方かしら。

いずれにしても、これで知識のパラメーターは上がる。

よしよし。

良い傾向だ。頑張ろっと。

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