店内には俺と棚の掃除をしているセラ、そして二階には午後からしか働かないハナがいる。
「やっと落ち着いて営業ができるな」
最近やたらめったら
全員店にいると手狭なので二人から三人で店を回しているので俺の休みも前より増えた。
今はライリルはダイリルの所へ行き、ミールは「新しい衣装を」とか言って出かけていった。
「考えれば余裕あるよなぁ」
少し前までは借金あったから毎日の営業でいっぱいいっぱいだったけど、お金もあり、従業員もいる今この状況は非常に喜ばしいことだ。
「全部偶然見つけたこのスキルのおかげか」
トラブルも同じぐらい起こってるがまぁ、それはそれとしていいだろう。
みんなも頑張ってるし社員旅行でも考えてやろうかな。
あー、余裕。余裕。マジで人生楽勝バンザイ!!
そんなことを考えていたら。
「アタック!! ゴーゴーゴー!!」
「「「ラージャー!」」」
黒ずくめの男達が店内に押し寄せてきた。
「おいおい! 何だお前ら!」
男達は店内の品物にどんどん「差し押さえ」と書かれた紙を貼っている。
「ちょっとなんなのあんたたち!」
「やめろって! 何のつもりだよ!」
「貴方がコール・リードさん?」
黒服の一人が俺に声をかけてくる。
「そうだけど?」
「実はですね。あなたのご両親がウチで借金をしたまま逃げてしまいまして、身元保証人であるあなたの資産を差し押さえに来ました。あなたへの置き手紙がありましたのでお渡ししますね」
俺は黒服から手紙を受け取り読み始める。
『我が愛する息子へ
息子よ。仕事頑張ってますか?
お父さんとお母さんは愛するお前のことを一秒たりとも忘れたことはありません愛してます。
もう一度書いておきます。
愛してます。
話は変わりますがお父さんは新しい街の飲み屋で出会った人と一緒に仕事を始めようと持ちかけられ、多額の借金をしてその人にお金を渡しました。
そうするとどうでしょう。
次の日にはその人がいなくなり、残ったのは多額の借金だけです。
なので愛する息子よ。
後は任せる。
私と母さんはまた次の場所へ向かいます。
お前も元気に生きろ。
パパより』
「なんじゃそりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺はクソみたいな手紙をビリビリに破いてから踏みつけまくる。
「はぁ……はぁ……で、親父は一体いくら借金したんですか?」
「元金、利息、遅延金、迷惑料含めて25億ギークだな」
「はっはは……」
「お前の口座から金は引き出させてもらった。で、残りの利息分が少し足らなかったから店の品物差し押さえさせてもらうぞ」
もう笑いしか出ねぇ……
「それじゃあ、コールさん。品物は後日取りに来ますからね。おい! お前ら引き上げるぞ! 」
黒服達が一斉にいなくなる。
俺は放心状態でその場に膝を付き半笑いで空を見上げている。
「だっ……大丈夫?」
セラの言葉も耳に入ってこない。
「クソ親父ぃぃぃぃぃふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の叫びは虚しく響き消えていった。