『これは一体どうしたことでしょうっす!』
『このラルド達はレース場が潰れるまではここで飼われていたラルド達のようですね。見てください。頭に旗が刺さっていた穴の名残が見えます』
『本当っすね』
『そしてレース場が閉鎖して生活に困ったのはラルド達も同じ人間に勝手に乱獲されて見世物にされいきなり捨てられたことにより凶暴化したと推測されます』
冷静に解説してる場合がよっ!!
ラルドの大群は一目散にこちらに向かってきている。
ん?
ラルドが凶暴化したそもそもの原因作ったのって……いや、深く考えるのはよそう。
まずはマタタビでニャンゴロしているライリルの耳を即座に剥ぐ。
「んにゃ!? にゃにが起こったにゃ!」
猫が抜けきってねぇ!
「細かい説明はあとだ! ライリル! ダイリルと一緒に逃げろ!」
「わかっにやったにゃ!」
にゃが多くて分かりづらいが理解したようだな。
「セラも早く逃げろ!」
大きな声でセラにも伝える。
「とはいったものの……だ」
ラルドの大群は俺の方に全速力で向かってきている。
一応、助かる確率を見てみるが……もちろん0%だわな。そりゃそうだ。
逃げ出したい気持ちはあるが、ここでどうにかしないと沢山の人が被害合うのは確実だ。
「ったく、借金返して金持ちになったのに毎回毎回、厄介事が起こりやがる」
不思議と嫌だとは思わなかったけどな。
ひ弱な俺の実力でこんなラルドの大群をどうにかできるとは思わないがやれることはやろう。
「ハナ! ミール! 俺が時間を稼ぐからレース場の入り口を全部閉めろ!」
『むっ! 無茶っすよコッコ! こんな大群に体当りされたらミンチっすよ! ミンチ!』
『魔法で閉めといた』
「よくやったミール! さぁ……後は……」
ラルド達はもう俺のすぐ近くまで来ている。
「どうすればいいのかなぁ!!」
「よくぞ漢を見せた」
「え?」
「じゃが、コールくんよ。それで死んだら元も子もないぞ?」
俺の前にダイリルが割り込んできた。
「ダイリル! お前ライリルと逃げたんじゃ!」
「安心せいライリルちゃんとセラさんは会場の外に避難させたわい」
「だからってあんたは戻ってこなくてよかったじゃないか!」
「いいか? コールくん。年寄りの戯言だと思って聞いてくれ。漢ってのはいつもはフザケてて良いだがしかし! 大切な物を守る時は何を自分の命を捨ててでも守りきれ! ライリルを任せたぞ!」
「ダイリルさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
ダイリルが俺に背を向けながら昨日見た構えをする。
ラルドの大群はダイリルの目前。
もうダメだ!
「はぁ!!!!!!」
ダイリルが叫んだ直後信じられないほどの衝撃波が俺の身体に飛んできた。
風圧で俺の身体は宙に浮き吹き飛ばされる。
「ぐえっ!」
着地に失敗して変な声が出てしまう。
「いってぇ……一体何が起こったんだよ……え……何だこりゃあ!!」
ラルドの大群が山積みになって全部気絶してやがる!!
「おいおいおい現実かよこれ……」
「歳をとったのう。これが精一杯じゃ。大丈夫だったかコールくん」
全裸になったダイリルが俺に近づいてくる。
神がかり的な陽の光で危ない部分がすべて見えないのが唯一の救いだ。
「ダイリル、あんた一帯何者なんだ?」
「なぁに、しがない只のじじいじゃよ。立てるかの?」
ダイリルが俺に手を差し伸べてくる。
俺はダイリルの手を握り立ち上がった。
「この勝負ワシの負けじゃな」
「そんなことはないだろ」
「覚えておらんか? ライリルちゃんの耳を取ったのはお前さんじゃ」
「あっ!」
あの時はライリルを逃がすことしか考えていなかったが思い返せばライリルの猫耳を取ったのは俺だった。
「ダイリル……いや、ダイリルさんあんた……」
「コールくんとの勝負、楽しかったぞ」
「俺も最高に楽しかったよ」
俺達は熱い握手を交わしそこに友情が生まれ……
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なに油売ってんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ダイリルさんが飛び膝くらって吹っ飛んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「ばっ! ばあさん!! どうしてここに!」
「ばあさんだと!!」
この狂戦士みたいなオーラを放ってカマを振り回しているこの人がライリルのばあちゃんなのか!?
「今日は朝から草むしりを手伝えと言っていたはずたが?」
「すすすすす! すまん! 悪かった! ごめん! 許して! コ、コールくんも謝って! 早く! はやーく!!」
「人のせいにすんじゃないわよ! あんたは昔からいつもいつもそうやって! あんたの技の気を追ってここに来てみたらこれよ!!」
「ごっ! ごめんしゃい!!」
「ほらっ! いくわよ!!」
「いででででで、やめてー!」
耳を引っ張られながら無惨に全裸で連れて行かれるダイリル。
「かっこよかったのが全部台無しだな」
はーっ、マジでもう動きたくねぇ。
俺はその場で腰を下ろした。
「コール! 大丈夫だった!」
「ゴォォォォルゥゥゥゥゥゥ! ニャニャニャ!!!! ンンンッ!!!」
「絆創膏持ってきた」
「コッコ怪我はないっすか? 今からでも入れる保険あるかもしれないっすよ!!」
セラ、ライリル、ミール、ハナが俺に駆け寄ってくるのが見える。
あぁ、こんなドタバタがいつまでも続けばいいかもな。
いや、全部の原因は俺か。
まぁ、でも、楽しいからいいか!
「おーっし! これから皆で祝賀会でもやるか!!」
俺は立ち上がり皆に手を振りながら歩き始めた。