『さぁ! 泣いても笑ってもこれが最終戦っす! 最終戦の競技はダイリル選手からの発表になるっす!!』
「最終戦なんだから卑怯な手を使うなよ」
「わかっておる。おーい! ライリルちゃんちょっと来てくれんかー!」
呼ばれたライリルが嬉しそうに走ってくる。
「なになに? ボクが必要なの? さっさーん! やっぱりボクはいつも人気者!!」
「そぉれいっ!!」
「ふにゃ!?」
ダイリルが隠し持っていたのであろう猫耳をライリルの頭に装着させる。
「にゃにゃにゃ〜ん」
ライリルが自分の右手をペロペロと舐め始めてる……これは一体何なんだ?
「それでは最終種目を発表するぞい! 猫化したライリルちゃんの猫耳を取ったほうが勝ち! 愛を示せ猫耳剥奪バトルじゃ!!」
そういや、こいつ猫耳つけると発動する猫化ってスキル持ってたんだっけな。
『おぉぉぉぉぉ! 客席がヒートアップしてるっす! さて、最終戦では新たに解説のミールさんが起こしっす』
『私が育てた』
誰をだよ!
ったく、まぁライリルの猫耳を取るぐらいなら余裕だろ。
「ワシが先に行かせてもらうぞ! さぁ! ライリルちゃん! おじいちゃんじゃよ? 美味しいアイスもあるからこっちへおいで」
ずっりぃ! アイスとかありかよっ!
「にゃ〜ん。にゃ〜ん」
ゆっくりとライリルがダイリルに近づいていく。
『あーっと! これは即座に勝負が決まりそうっす!』
『甘い』
『え? どうしてっすか?』
『見てればわかる』
「ふっふっふっ、この作戦に穴などない!」
四足歩行で近づいていくライリルが前屈みになりお尻を上げて左右に振り始めた。
このポーズはなんだ? 需要はありそうだが。
「きしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「なんじゃとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
勢いよく飛びかかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
咄嗟にダイリルにタックルをかまして助けに入る。
「おいおいおい! ただの猫のはずだろ? 今の絶対に殺しにかかってたぞ!」
とうのライリルはフーフー言いながらこちらを威嚇している。
『これはどういうことすかね?』
『あれは、ただの小型の猫じゃありませんね。私の予想では彼の国で猛威を振るって
いるネコ科最強のイムールトラの動きによく似ています』
『イムールトラ? それは強いんすか?』
『大型のモンスターを食料としているぐらいには凶暴です』
「それはもはやモンスターだろっ!!!」
「コールくん……ワシを助けてくれたのか? ポッ」
ポッ。じゃねぇよ! お前のせいで生命の危機に直面してんだよっ!!
「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ライリルの髪が逆だってる!
絶対に狩る気まんまんじゃねぇか!!
『早く耳を取ってくださいっすー』
『早くしろ』
「すーじゃねぇよすーじゃあ! 無理に決まってんだろこんなもん!! あとミールお前の言い方なんかムカつくな!」
どう考えても無理があるだろうこれ。
「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ライリルが飛びかかり俺達に襲いかかろうとした瞬間、ダイリルが何か袋を投げつけた。
「にゃあぁぁぁぁんうにゅうにゅ」
「はえ?」
ライリルはその袋に身体を擦り付けながらゴロゴロと転がり恍惚の表情を浮かべている。
「こんなこともあろうとマタタビの袋を隠し持っていてよかったのう」
「最初からそれ使えよ!!!」
ライリルはヨダレを垂らし仲間らクネクネし続けている。
これはこれで需要はあるんだろうけどな。
「はぁ……じゃあ猫耳取って終わりにするか」
俺が喉からゴロゴロ音をさせているライリルの耳に手を伸ばそうとした時だった。
「ラッ! ラルドが逃げ出したぞー!!」
大量のラルドの大群がレース場に押し寄せてきた。