「はーーーっ、疲れたな」
俺はライリルの隣に勢いよく座る。
動いた疲れと人に沢山見られてるから余計な疲れが溜まってきてる。
「コール……ご飯食べる?」
「なんだよライリル? 腹は減ったけど俺何も持ってきてないぞ?」
「あ、あのにゃ? おにぎり作ってきた……」
ライリルが恥ずかしそうにしながら弁当箱にミチミチに入ったおにぎりを渡してきた。
「おー! ライリルの手作りかすげぇ! 良く出来てるじゃん!」
「にひひっ、そうだろそうだろ? 早く! 早く食べてみて!」
俺は不格好なおにぎりを一つ手にとって口に運ぶ。
「どう? どう?」
「ん……いや……」
瞬時に脳が叫んでいた。
飲み込んではイケない。
いや、でも見た目は普通のおにぎりだったはずだ。
だが口に入れた瞬間に溢れ出すこの生臭さは一体何だ。
背中には悪寒が全速力で往復している。
「不味かった?」
やめてくれライリルそんな顔をされたら口からこの異物を吐き出すことが出来ない。
「まずがっだ……」
飲み込め! 飲み込め! 飲み込め!
必死に脳から送られてくる『吐き出せ! 吐き出せ! 吐き出せ!』との指令を魂の叫びでかき消していく。
俺は男の子だ。これぐらいなんともない。
『男とか女とか関係ない。やばいものは吐き出すべきだ』
吐き出したらライリルが悲しむだろうが少しは我慢しろ!
『しててこの状態なのはお前が一番分かっているはずだ!』
脳よ。お前は俺なのに何もわかっちゃいないな。
『んだと?』
お前はつい何週間か前は借金の中、一人で店の中にいたよなぁ?
『そうだが?』
このラルドレース場でスキルを見つけて店を続けられるようになったよなぁ?
『それがどうした?』
セラが店に来て、ライリルが来て、ミールが来て、ハナが来て毎日楽しくなったよな?
『たっ……楽しいな』
じゃあ飲み込めるよな?
『えぇ……』
気取ってるようだが俺は今を大切に生きたいんだ。
だから俺の守れる範囲の人達を悲しませたくないだろうが!
こんなおにぎりぐらい余裕で飲み込めんだよっ!
ライリルを悲しませんじゃねぇ!!!!!!
根性見せろよ!!!!!!
コール・リードはこんなところでおにぎりを吐き出すほどヤワじゃねぇだろうがっ!!!!
飲み込めおらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
『ふっ……お前には負けたよ……俺』
ありがとうな……俺。
「……ぶっはぁ!! ラ、ライリル……これ……無茶苦茶美味しいよ……美味すぎて飲み込むのに時間かかったんだ……」
本当は吐き気が止まらないけど。
「よかったぁ! ほらっ! まだいっぱいあるから遠慮しないで食べていいよ!」
「あり……ありがとうな……」
俺、最終戦の時まで生きてるかな?