『さぁ! レフリーの合図と共に両者布の掛かっている品物に走り出したっす!』
品物までは少し距離がある。
チラッと横を見るとダイリルは見えない。
俺が先に品物に到着し品物に掛かっている布を取る。
「なんじゃこりゃ! きったな!!!」
出てきたのは乾燥した土泥がこびり付いている鎧だった。
しかも装飾が細かくてその隙間にもこびり付いている。
「しかもメッキ素材じゃねぇかよ」
豪華な装飾を施してるように遠目では見せて威嚇するためだけの鎧。
見せかけだけの何も役に立たないメッキ素材が表にはられているだけの安物鎧である。
「これを綺麗にするとか至難の業だぞ!」
こんなもんどうやってもメッキがボロボロ剥がれてキレイにするとか以前の問題になるだろ。
「やっと着いたわい。ほれっ!」
隣でダイリルが布を放り投げた。
俺と同じような品物を用意されてるのかと覗き見る。
「ダイリルふざけんなよっ!! なんだそのちょっと汚れた木靴はよぉ!」
どうやって見ても不正だろこれ!
「バカ言うでない! ワシのはお前のから遠いから汚れてないように見えるんじゃ! だからワシから見たらお前の鎧はピッカピカに見えるぞっ!」
「漢と漢の勝負じゃなかったのかよ!!」
「かーかっかっかっ! 作戦勝ちじゃ!!」
その後、俺は必死になって鎧を磨こうとしたが三十秒ほどで木靴をピカピカにしたダイリルに俺は敗北を喫した。
『第一回戦はダイリル選手の勝利っすー! では両選手セコンドの所まで戻ってくださいっす』
ダイリルとセラがハイタッチしているのが見える。
「こんなんじゃ勝てるはずない」
肩を落として戻るとライリルがウルウルした目で俺に何かを訴えようとしていた。
「分かってるよ。次は勝つからそんな顔するな。いつもみたいに明るくしててくれよ」
「ゔんっ……」
『それでは先に第二回戦の勝負内容を説明するっす……』
二回戦は買取クレーマー客への対応力勝負だった。
内容は買取にもって来た品物の買取金額に対して「これ高級だったのにおかしいで
しょ! 不快になったから私の言い値で買取って」と言ってくるクレーマーマダムの対応力だった。
先に対応したダイリルが「じゃあ他のお店に持っていってくれ」といった瞬間マダム友達の大群を呼ばれて一網打尽にされていた。
俺はというと、まずクレーマーマダムの頭の上の数字を確認する。
そこまで酷い金額ではなかったので少しだけ色を付けて謝罪をしながら買取金額を訂正すると「よく分かってるじゃない。次は気をつけなさい。私みたいに優しいお客は少ないんだから」と言わなくても良いことも言って帰ってくれた。
「ふんっ! 第二戦は最終戦への捨て勝負よっ! 本番は最終戦じゃ! 覚悟しておれっ!!」
どうにか最終戦にはもつれ込んだ。
確かに二回戦は一回戦のような卑怯な手は使っていなかったが、最終戦はどうなるかわからない。
『それでは一度休憩に入りますっす。場内では売り子がお弁当、飲み物を販売してるっす。是非買って欲しいっす』
「まいど〜」
ミール……お前はいつもそんな出演の仕方で文句はないのか?