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第3話 稼ぎすぎも問題あり?新人バイト入ります!

「ぶーひゃひゃひゃひゃ!」


 あまりにもテンションが上がりすぎて買取カウンターの中で悪役みたいな笑い方になってしまった。


 あの後、俺の予想は大当たり! 毎レースラルドの頭には順位が浮かび続け、ただただ毎回1と表示されているラルドに手持ちの金を全て入れていくだけで大量のギークが手に入っていった。


 途中から三連複の方が倍率がいいことに気が付いてからは稼げる金額が跳ね上がった。


 最終12レースが終わるころには俺のギークの総額は30億ギークになっていた。


 途中から受付が大慌てになり最終的には金額が大きすぎて手渡しも出来ないようで銀行に振り込みになった。


 昨日の夜からその通帳を眺めては悪役笑いを繰り返しているってわけだ。


 もうこんな店を続けなくていいし、セラの奴隷にもならなくていい!


「俺の人生は勝ったも同然だ!」


 さて、これから何をしようか。


 どこかに土地でも買って豪邸を立ててメイドを雇い自由気儘なスローライフ生活でも送っちゃう?


 一日でこんなに人生が激変するとはじいさんがギャンブルを店の金を使ってハマっちゃうのもわかる気がするわ。


 それにしても今日はなんだか街の様子が騒がしい気がする。


 まだ貰っていないが外では号外が配られているようで、それを見て「これで自由の身だ!」とか叫んでいた人もいたぐらいだ。


 まぁ大金持ちになった俺にはもう関係のない話だけどな!


「……お邪魔するわよ」


 この声は。


「おぉ! セラ! よく来たって……っておい! なんだその恰好!」


 新聞じゃん……新聞紙とかチラシを体に巻いてるだけじゃん。


 え? 夢? 夢かな?


 セラの体を上から下までよく見てみる。


 新聞紙がぴったりと体に張り付いていてこれは中々……こいつ結構胸あったんだな。


「ジロジロ見ないでよ! こっちだって色々あったのよ!」


「色々あったにしてもおかしいだろ! 昨日まで豪華なドレス来てたじゃん! それがどうやったら一日でそんなエロ……変な格好になるんだよ!」


「あんた号外見てないの?」


「号外? あぁ外で配ってるみたいだな。まだ見てない」


「はい、これ」


 セラが自分の胸の当たりに張り付けていたチラシを一枚俺に渡してくる。


 少し生暖かいチラシにはデカデカと「エルフィン家没落! ラルドレースにて資金が底をつき当主とその夫人が夜逃げ!」と書かれていた。


 これって……え? 俺のせいじゃね?


「昨日のラルドレースで馬鹿みたいな金額掛け続けた奴がいて、家の資産全部配当金で払っても支払いきれなくて家も家財も全部差し押さえにあったのよ! お父様とお母様はいなくなっちゃうし……今まで金貸ししてた奴らはこれで借金返さなくてよくなったって喜んでたけどね」


 やっぱり俺のせいじゃん!


「危うく奴隷として他国に売り飛ばされそうになったから私を連れて行こうとした二人ぶちのめしてここに来たってわけ」


 完全に俺がセラの人生を破滅に追いやってるやんけ!


「でも、もうここには居られないわ。奴らも、もう追いついてくるだろうから。コール……あんたと会うのもこれで最後になるでしょうね。借金もこれでチャラよ! よかったわね!」


 そこに黒服の男が二人店に駆け込んできた。


「ここにいたのか! このっ! よくも暴れてくれたな!」


「自分の立場を考えろ! もうお前を買うって貴族も出てきてんだから時間をとらせるな!」


「……じゃあねコール」


 セラが男たちに腕を引っ張られていく。


 俺のせいでセラを不幸にさせちまったのか。


 どうする……そうだ!


「あっ! あのっ! バイト募集してんすよね!」


「はぁ? 何言ってんだお前?」


「コール?」


「あのー、丁度ですね奴隷を一人雇いたいなって思ってまして! で、偶然その奴隷が店に来たから雇おうかなって思ってるんですけど、どうですか?」


「……いくら出せる? 貴族は3億ギーク出すって言ってるぞ? こんなボロい店にそんな金ないだろう?」


「じゃあ5億ギーク出します。それなら売ってくれますよね? もちろん即金で渡しますよ」


 黒服の二人はなにやらヒソヒソと話し始めた。


「コールあんたそんな大金どうしたの?」


「セラは気にしないでいいから」


 気にされてバレるのが一番怖いから。


 黒服二人の話がまとまったみたいで一人が俺に声をかけてきた。


「わかったいいだろう。俺が銀行に一緒にいく。このお嬢ちゃんとこいつは店に残ってもらう。それで金の引き渡しが完了したらこのお嬢ちゃんはお前のものだ。それでいいな?」


「大丈夫です」


 俺はその後、片方の黒服と銀行に行き、奥の個室に連れていかれてデカいケースに入った5億ギークを受け取って、すぐに黒服に渡した。


 店に戻るとセラがカウンター内の椅子に座っていて黒服が謎におばあちゃんの接客をしていた。


「おせえぞ! このお客さんがこのツボ欲しいって言ってんだけどお前対応してくれよ! すいませんねお待たせして」


 意外と良い奴なのかもしれない。


「5億ギーク確かに受け取ったぞ。これで正式にそのお嬢ちゃんはお前の物だ」


「また奴隷が欲しくなったら呼んでくれよな」


 二人の黒服はそのまま店から出て行った。


「ふーーーーっ疲れた……」


「コール……ごめんね」


 しおらしい表情で謝ってくるセラではあるが、そもそもお前の家を破産させたのは俺なわけで、5億ギークも元はお前の家の金だったんだけどな。


「いいんだよ。これでセラは自由の身だ」


「あのさ……ここで働いていいかな?」


「へ?」


「だってさっき言ってたでしょ? バイト探してるって」


 いや、あれはセラを助けるためだけの嘘で……5億使ったからと言って残り25億ギークあるんだから俺はこのままスローライフ送りたいんだが……


「いいでしょ? ほらっ! 看板娘がいた方が店の売り上げも上がるし! 私はほら別にここに住み込んで働いてあげてもいいわよ? 寝る場所もコールと同じベットでも構わないしね!」


「えぇ……やだぁ……」


「私を買い取った責任はとってもらうからね! はいっ! 決まり! 私はここのバイトになってあんたは私の上司兼夫になりました!」


「上司はまだしも夫にはなってねぇ!」


「じゃあまずは……ってきゃあああああああああああああ!」


 新聞紙の服で勢いよく動いたからセラの体に巻き付いていた新聞紙の耐久力が限界を迎えて破けてしまった。


 あれもこれもはだけて見えそうになっている。


「みないでええええええ!」


 俺は顔面にセラの全力エルボーを食らって後方に倒れた。


 見えたのは見えたが……今の一撃で色々飛んだ……


 あぁ……俺のスローライフ計画はどうなってしまうんだ……


 それにしても……やっぱりセラ……そこそこ胸が大きいんだな。

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