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第12話 旦那様への手料理(3)

 旦那様に私の失敗した料理を持って行かれたことにより、思わず床に四つん這いとなってしまいました。


 旦那様が気を使って、私の、手料理を……。

 お優しいので、無理してでも食べますよね、絶対。本当に、自慢の旦那様です。


「奥様、安心してください。味は美味しいかと思いますよ。見た目はまた練習しましょうか」


「二口女さん……。はい……」


 その場に立ち上がると、二口女さんも立ち上がりご飯をよそい始めました。

 私はお皿を洗おうと思います。


 スポンジを手にし、桶の中にあるお皿を洗おうとすると、なぜか二口女さんに止められました。


 また失敗すると思われているのでしょうか。

 大丈夫ですよ、お皿洗いなら出来ます。


「こちらは大丈夫なので、お茶と白米を七氏様に届けていただいてもよろしいでしょうか」


「え、よろしいのですか?」


「はい、お願いできたら嬉しいです。また明日、一緒に料理を行いましょう」


「ありがとうございます!」


 二口女さんがたすきを取ってくださり、白米とお茶が乗っかっているお盆を渡してくれました。


「行ってらっしゃいませ」


「ありがとうございました」


 浅く腰を折り、暖簾を潜り廊下に。

 旦那様の部屋に一直線です。


 転ばないように気を付けながら歩いていると、すぐに旦那様の部屋に到着。

 中に声をかけると、旦那様の声が返ってきます。


「うむ、お疲れ様だ」


「いえ……。私は、迷惑をかけただけで終わってしまいましたので…………」


 中に入り、旦那様の机に持ってきた白米とお茶を乗せます。


 あ、箸が旦那様の手に握られていました。

 天ぷらのお皿を見てみると、サツマイモがなくなっております。


 しっかりと食べてくださって嬉しいのですが、無理してないのか本当に不安になります……。


「顔が青いが大丈夫か?」


「い、いえ!! あの、無理してないですよね? 旦那様」


「何をだ?」


「天ぷらです……。失敗してしまったので、味がいかがなものかと」


 不安がそのまま口から出てしまいました。

 でも、不安なので仕方がないのです。


 旦那様が優しすぎるので、美味しくなくても口では美味しいと言ってくださる気がします。


「うむ、華鈴かりんよ、こっちに来い」

「え、はい―――きゃ!!」


 旦那様に手招きをされたので近づくと、手首を左手で優しく包み引き寄せられ、膝の上に座らされました。え、何故?


「あ、あの?」

「ん-? ほれ、食ってみろ」


 旦那様が菜の花を一口サイズに切り、私の口元に近付けてきました。


 振り返り旦那様を見ると、笑みを浮かべております。

 下から見上げているので黒い布で隠れていても、顔下半分は見る事が出来ました。


「自分で食えばわかるだろ? 食ってみろ」


「わ、わかりました」


 これ、旦那様からの”あーん”ですよね? 


 緊張で心臓が鳴り響いております。

 ですが、せっかくの機会、逃すわけにはいきません。覚悟を決めます、頑張ります。


 ――――――――パクッ


「どうだ?」


 私が食べると、旦那様が自慢げに聞いてきました。


 口の中でしっかりと噛んでいると、菜の花独特のほろ苦い味が口の中に広がり、癖になりそうです。味だけなら、美味しいかもしれないです。


「美味いだろ? だから、不安になるな」


 私の頭を撫で、旦那様が私の顔横で一口サイズの菜の花を食べました。


「…………旦那様、お食事、私の前で………」


「ん? 見たかったんじゃないのか? 我の食事姿」


 あ、もしかして、お買い物に行った時のことを言っているのでしょうか。


 確かに見たかったのですが、まさか本当に見せていただけると思っていませんでした。

 しかも、まさか旦那様の膝の上で食事姿を見る事が出来るなど、幸せです。


「ありがとうございます、私は幸せです」


「大げさだな。これくらいの願いなら、いつでも叶えてやるぞ。だから、遠慮なく言うのだ」


「あ、ありがとうございます。あ、あの、でしたら、一つ、いいでしょうか」


「お、さっそくか? 言ってみろ、遠慮はいらん」


 顔を覗き込んでいた旦那様の方に向き、先ほどまで私が考えていたことを打ち明けます!


「私、今よりもっと旦那様のお役に立ちたいのです。何か、私でもできることなどありませんか?」


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