高校生になってしばらくして、僕は
言い出したのは
特に気を遣ったりせずに喋り、他愛のないことで笑い合う。
並んで歩く。手をつなぐ。キスをする。
付き合い始めた時と同じように、それらはごく自然の流れだった。
女の子の柔らかさと温かさに、僕はすぐに夢中になった。
サラサラした髪、すんなり伸びた白い手足に、人形のような繊細な美貌。
皆に見せる、穏やかで曖昧な微笑み。
僕だけしか知らない、恥ずかしそうな表情や弾けるような笑顔。
毎日毎日、好きやと思っていた。
でも、恐くてこわくて、どうしても言えなかった。
触れるだけでドキドキして、痛かった。
忘れようがない、全部のこと。
それらは美しい物語として、大事に僕の胸にしまわれている。
そして、何かの拍子にそのページがはらりと開く ―― けど、その物語はもう、
「
夏、遊園地の後で
水鉄砲で水をかけ合ってはしゃぎ疲れた帰り道には、どこかの家からカレーの匂いが漂ってきていた。
「いいや。なんでなん?」
「だって中学生の頃、めっちゃ2人仲良かったやん! 皆付き合ってると思ってたで!」
初耳だった。
「で、なんで今さらそんなこと?」
「ママがね、ヘンな噂してて」
「あの子、小学生の時にお兄さんとデキてたとかなんとか」
「お兄さんって去年海に一緒に行ってくれてた人」
「うん」
「しょもない噂やな」
一瞬、脳裏に浮かんだ
「ありえへんやん、そんなん」
「けど言われてみたら、あの時、兄妹にしてもやたら距離が近いなぁ、そんなもんかなぁ、って思ってたんだ」
「ウソやろ」
「電車の中とか。普通にヒメちゃんの腰に手ぇ置いてたし」
「しょもないとこ見とんなぁ!」
「やねぇ」
「でも良かった。そんな子と
「しょもないわぁ、ほんま!」
急に汗がべとついたように感じて、僕はできるだけ自然に、
「だって気持ち悪いやん? 噂が立つだけでも」
「本当だね」
背後から不意に、キレイな標準語で静かに言われて、僕と
「気持ち悪いよね、そんな子って」
久々に見た
「えー!? ヒメちゃん! めっちゃ久しぶりー!」
「なんていうん? キレイになった? さっすが都会の高校は違うねぇっ」
「たぶん気のせい」
「勉強ばかりしてたから」
「えーほんま? かわいそー」
「そうなの」
如才ない感じの、軽い受け答え。
「
「はーい、実はそうなんです! わかっちゃった?」
「電車も同じだったのに、全然気づいてない感じだったから」
氷芽はまた、笑顔を作った。
「良かったね。お似合いカップル」
僕の胸はツキン、と痛んだけれど、僕にはもうそんな資格はない。
へへ、と
「しばらくこっち?」
「うん。25日まで」
「じゃあまた、連絡するからさ、遊ぼねー!」
「うん、よろしく」
それから
すごく気になったけど、それを確かめる時間も勇気も、僕には無かった。
けれど、その翌日。
真相は、意外な形で明らかになった。