その日は喫茶店で平野先輩がヒカリさんに泣きつくところから始まった。
「聞いてよヒカリちゃーん! ハルくんが
「えっ!?」
「ご、誤解だって!!」
驚きよりも悲しそうな表情をするヒカリさん。
こういう時は下手に
「まぁまぁ、加藤先輩の言い分もあるでしょうし、まずは
「だれが
「やだやーだー! 私以外の女子と仲良くしないでよォー!」
平野先輩が駄々《だだ》をこねるように手足を振り回す。
「愛さんって思ったより
ヒカリさんに言われた一言で平野先輩もハッとして少ししゅんとしたようだった。
「でもね! いい!? 浮気ってのはね『気持ちが
なんというか……、平野先輩のこれは浮気で怒っているというよりは
「お、俺は浮気って聞いたら、行為というかそういう関係というか……そういうのをしたら浮気ってイメージだったから、ただ話したくらいではならないと思ってたけど……。まぁ、逆の立場だったら浮気だとは思わないにせよあまり良い気持ちではないですね……。すみませんでした」
自分の思いを話しつつも、相手の気持ちに立って謝れるというのは単純に
「わかればよろしい、わかれば」
◇ ◇ ◇
「ところで……、雅彦くんとヒカリちゃんの浮気のラインはどこなの? この際だからお互いに確認しておいたら?」
解決したと思ったら予想外にも自分たちにまで
さっきまで当事者だった平野先輩は
「え、えーっと………、そうですね僕の場合は平野先輩に近いかなぁ。気持ちが
自分でもうまく言語化出来たのではないかと思う。人と人との距離感が物理的に無くなったらダメだって感じている。
「なるほどぉ、わかりやすい例えまで入れてくれてありがとー。じゃあ最後にヒカリちゃんの浮気とは?」
「えっと……、大体の部分は雅彦くんと同じなんだけど、少し違うのが手を繋ぐのはダメ、キスするのもダメ、でもその先の行為に関しては別に気にならないかな……?」
「えっ!?」
三人とも同じリアクションというか、意外な答えに驚いてしまった。
「何か意外で驚いちゃったけど、その心は?」
氷川さんは少し恥ずかしそうだけど真面目な顔で口を開いた。
「手を繋いだりキスをするのって、相手に愛情が無いとしないと思うんです……。でも、その先の行為って別に愛情が無くても
なんというか、言っていることの理屈はわかるけど理解が追いつかない不思議な感じに
なるほど、世の中にはこんな人もいるのかと、まるで他人事のように自らの恋人のことを考えていた。
「ヒカリは子供の頃から好き嫌いが特殊な部分があったけど、今回の話に関してはその
「なんか、アタシがハルくんにアレコレ言ってたのが馬鹿みたいな
「べ、別に達観してるわけじゃ……!」
その後も結局話が元に戻って加藤先輩がいじられ続けたけど、こんな気心のしれた四人でもまだまだ知らないことや、隠れた一面があるのだと言うことが知れた一日だった。