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#25 ある美漢 第13話

 僕、安藤雅彦あんどうまさひこ衝撃しょうげきを受けていた。


 氷川ひかわさんと初デートでドキドキしながら待ち合わせ場所に行くと、何故か加藤先輩と見知らぬ女の人がいたからだ。


 氷川さんから事情を聞くと、一対一だと緊張きんちょうしてしまうから誰かに付いてきてほしかったということらしい。


 確かに僕も物凄ものすごく緊張しているから、加藤先輩がいるというのは安心するような恥ずかしいような……。


 どちらにせよ、来てもらってしまったのだから今更帰って貰うわけにもいかないし、デートと言うよりもただのお出かけになってしまったけど、今日という日を楽しもう。


 ――と思っていたら平野先輩がなんだか楽しそうに笑っていた。


「いやぁ、それじゃあ行こうかねぇ、ダブルデートってやつ」


「「「ダブルデート!?」」」


 変な所で平野先輩以外の三人の声がハモってしまった。


「あれ? そういうつもりで呼んだんじゃないの? ヒカリちゃん?」


 平野先輩が突拍子とっぴょうしもないことを言い出している。


「そ、そういうつもりでは無かったんですけど……。勇気がなかったから、付いてきて欲しかっただけで……」


「でも、それだとせっかくの雅彦くんとのデートなのに、アタシ達が邪魔になっちゃうでしょ? だから、いっそのことダブルデートにすれば雅彦くんも気にならないだろうし、アタシと春昭くんは今後本番に向けた練習になるってわけで」


 その理屈はあってるのかな……? あってるのかも……?


「いや、でも、俺と平野先輩って知り合って一時間も経ってないですけど、そんな……」


「そこはヒカリちゃんから耳にタコが出来るくらい聞いてた幼馴染おさななじみというのを信用することにするよ! 春昭はるあきくん! だから、失望させないでくれたまえヨ!」


 平野先輩がたからかに笑っている。物凄いテンションに全く追いつかない。


「さぁ行こう! 若人わこうどよ!」


 全員の背中を平野先輩がバンバンと叩き、我々一行いっこうは水族館へと向かうのであった。

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