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#17 ある美漢 第9話

 僕、安藤雅彦あんどうまさひこ困惑こんわくしていた。


 数時間前に氷川ひかわさんに改めて告白をして、無事に交際することとなった。


 当たり前の話かもしれないけれど、告白成功がゴール地点じゃなくて、交際開始はスタート地点なんだ。


 僕は今まで告白することに必死で、その先のことを全くと言っていいほど考えていなかったし、今もどうしていいのかさっぱりわからない……。


 そ、そうだ。こういう時は氷川さんと幼馴染おさななじみの加藤先輩に聞けば……。


 思い立ったら吉日きちじつと言わんばかりに、早速僕は加藤先輩に電話をかけた。


『早い早い早い。どうすれば良いか聞いてくるのが早い。昨日の今日どころか今日の今日じゃねぇか。想定外の早さでびっくりしたわ』


「あ、いえ、その……すみません……」


『別に後輩に頼られるのは嫌じゃないが、少しは自分で考えろ、あせりすぎだ。それにヒカリ個人のことはそれなりに知っているけど、俺だって恋愛に関しては経験値ゼロに近いんだからわかんねぇよ』


「おっしゃるとおりです……。ぐうのも出ません……」


『まぁ、また何かあったら話くらいは聞いてやるから。ヒカリと連絡先は交換したんだろ? そんなに通話が緊張するならメッセージとかでやり取りしてみればいいんじゃないか?』


「き、緊張してしまうけど……。わかりました、一度話をしてみます。ありがとうございます」


『じゃあな』


 終話しゅうわすると軽くしかられたプレッシャーが残っていたが、それ以上に氷川さんにメッセージでやりとりをするというプレッシャーが重くのしかかってきた。


 好きな人とやり取りするっていうのは、楽しさと緊張と色々なものが混ざりあった複雑な心境になって、なかなかすぐに送る事が出来ない。


 僕は人生で初めて嬉しい悩みというものを味わっていた。

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