#7 ある美漢 第4話
僕、安藤雅彦は迷っていた。
僕が告白した氷川さんは男だった。その上で僕は何と氷川さんに答えれば良いのだろうか……。
氷川さんと幼馴染だと言う加藤先輩には『自分で答えます!』などと大見栄を切ってしまったが、実際のところプレッシャーに押しつぶされてしまいそうだ……。
一体、僕はどういう答えを氷川さんに返せば良いのだろうか……。
休み時間の度に僕が教室でウンウンと唸りながら迷っていると、隣の席にいる篠崎有紀奈さんが声をかけてきた。
「安藤くん……随分とお悩みのようだけど……。どうかしたのかしら……?」
彼女は掴みどころが無くふんわりとしていて、どこか不思議な雰囲気のある女子だ。
入学してから何回か席替えがあったけど、くじ引きなのに不思議といつも僕の近くの席になり、その縁でよく話すようになった。
「うーん、悩んではいるけど、これは僕が自分で解決しなきゃいけない事だからなぁ……。気にしてくれてありがとう」
「フフッ、真面目なのね……。そんな安藤くんに助言をするとしたら、難しいことは考えず自分の思ったままにするのが一番良いと思うわ……」
なるほど……。思ったままを氷川さんに伝えるっていうことか……。
僕が難しい顔をしていたからか、彼女は少し微笑んでいた。
そういえば、彼女が面白そうに笑っている姿は入学して以来初めて見た気がする。
すると、教室の入り口から彼女を呼ぶ男子生徒の声が聞こえてきた。
「篠崎さーん! 政木先生が呼んでるよー!」
政木葉子先生は僕らのクラスの担任の先生であり、僕が所属するバレー部の顧問の先生でもある。
ボブヘアーで元気があって、若くて僕たちと年齢が近いからか生徒との距離感も近くて面白い先生なので、クラスメイトからも評判が良い。
「仕方ないわね……。それじゃあ安藤くん、氷川さんとうまくいくことを祈ってるわ……」
「ありがとう、篠崎さん。少し気持ちが楽になったよ」
――ん、何で氷川さんのことを?