#5 ある美漢 第3話
俺、加藤春昭は面倒臭がっていた。
それもこれも、幼馴染のヒカリからまた面倒な相談を受けてしまったからだ。
俺は部活が始まる前の時間を使って、雅彦にヒカリのことを聞いてみることにした。
「えっ……。じゃあ先輩と氷川さんって知り合いだったんですか……!?」
「あー……まぁ知り合いというより、幼馴染というか腐れ縁というか……。だから、返答がもし伝えづらいようなら、俺経由でヒカリに伝えてやろうと思ってな」
別に本当はそこまで頼まれているわけではないが、高校に入ってから既にヒカリが告白してきた相手に断られるという光景を何度か見てきている。
その度にアイツは傷つき、悲しんでいるのを知っている。
だから、せめて直接断られるのではなく、俺を介することで少しでも傷つく量を減らしてやれればと思っている。
もちろんアイツはそんなことを俺に頼んではいないし、俺が勝手にやってるだけだ。アイツも告白してきた何人もの見知らぬ誰かに後ろめたさを持つよりも、勝手知ったる俺一人に対しての方が幾分楽だろうしな。
「正直、迷ってる部分が全く無いと言ったら嘘になりますけど、心の中では決まっています……! だから、先輩を介してじゃなく、僕が直接氷川さんに気持ちを伝えようと思います!」
俺が敢えて悪役をしてやろうとしているのに……。コイツは話を聞いていないのか察しが悪いのか……。本当に馬鹿正直なやつだと改めて実感した。
雅彦は良くも悪くも真面目なやつだ。だが、その実直さで誰かを傷つけてしまう前に、色々と学んで欲しい。
――という感じで、いつの間にかそういう他人のアレコレまで考えて、気がついたら問題に自分から首を突っ込んでしまっている。厭だ厭だ。ヒカリからの相談なんかより、他でもない俺自身が一番面倒臭い人間だと常々《つねづね》思っている。