ガエイ
現代ファンタジー異能バトル
2024年09月15日
公開日
110,793文字
完結
【ある美漢(あるみかん)】
高校一年生の安藤雅彦(あんどうまさひこ)は、同じ高校の『とある美しい女性』に好きだと伝えた。
しかし、彼女からは衝撃的な言葉が返ってきた。
「あの……私『男』なんだけど……大丈夫?」
その時初めて知った。惚れた人は確かに美しかったが『とある美しい漢(おとこ)』だったのだ。
【恨み感(うらみかん)】
異なる並行世界から移動してきた篠崎有紀奈(しのざきゆきな)は、血だらけで死にかけた青年と出会う。
青年の治療を済ませた彼女は、青年から事情を聞くと安藤雅彦達が通う高校へと潜入することとなった。
「想像以上に面白い世界ね……。この『恨みの感情』で覆われた『裏の世界』を楽しみましょ……」
<これは二つの時間を跨る二つの物語。>
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完結済みにしてありますが、気が向いたら外伝を時々書きます。
#1 ある美漢 第1話
僕、安藤雅彦は緊張していた。
僕は今日、『とある美しい女性』に告白をするつもりだ。
高校に入学してまだ三ヶ月だけど、登校途中にいつも同じ時間の電車に乗っているあの人。同じ高校の制服を着ていたから、その女性が同じ高校の人だとすぐにわかった。
下校時、昇降口で彼女が出てくるのをこっそりと待ち続けて、使っている下駄箱から一学年上の先輩であることもわかった。
二年生の下駄箱の名前には『氷川ヒカリ』と書いてあった。
今思えば、熱が入りすぎてストーカー紛いなことをしていたと反省している。
腰まである長くスラリとした黒い髪の毛は美しく、品があって物静かで、スカートから出る細くスラッとした脚は彼女の体型の良さを体現している。そんな彼女に僕は吸い込まれるように一目惚れをしてしまった。
だから、僕は今まで出したことの無いくらいの勇気を出した。氷川さんの下駄箱に、放課後に体育館裏へ来て欲しいと書いた手紙をいれた。
すると、放課後に氷川さんは本当に来てくれた。
僕の思いの丈を精一杯伝え、生まれて初めて心の底から『好きだ』と人に伝えた。
「ありがとう……。こんな私で良ければお話はお受けしたいんですけど……」
氷川さんは目線を下に逸し、困っている様子だった。
「ただ……あの……もしかしたら知らないかもしれないから、一応確認しておくんだけど……」
氷川さんがもじもじしながら、上目遣いで僕のことを見てくる。
その仕草だけでも可愛い過ぎて、もっと彼女の事を好きになってしまいそうだった。
「あの……私『男』なんだけど……大丈夫?」
その時初めて知った。
氷川さんは確かに美しかったが女性ではなく『とある美しい漢《おとこ》』だったのだ。