「あっ、うん……あの、ごめんね、嫌なこと言われて、守ってあげられなくて……」
「嫌なこと? アタシそんなこと言われてた?」
首を傾げれば、メイリーが苦笑する。
「大丈夫よ。アタシこう見えても強いから。サンダルだって自分で履けるのよ」
「そう? なら心強いよ。
こういう時にアーシェが居ればいいのに、どっか行っちゃうし……」
「そういえばアシャンティ居ないわね。どこ行ったのかしら」
キョロキョロと当たりを見回しても、アシャンティの姿は見当たらなかった。アンドレイとヴィクトルに話しかけるまでは傍に居たはずなのだが、どこかに行ってしまったようだ。
「多分ルカを探しに行ったんだよ」
「あぁ、そういえばギルドに入ってすぐ探してたわね」
「そー。二人は親友だからさ、いつも基本的に一緒に行動してる。今日はアーシェが単独任務で居なかったから別々だったけど」
「そうなのね。
じゃあ、アタシはそろそろ帰るわ。可愛い同居人が晩御飯作って待っている予定なの」
聖愛はサインをした紙をメイリーに託すと、「また明日ね」「うん、また明日!」と会話を交わし悠然とギルドを出ていく。
「“おはよう”」
ギルドの奥のバーカウンターから出口まで、聖愛には沢山の視線が向けられる。しかし聖愛は気にせず、カードを呼び出した。
カードに眠りしは書の魔神、聖愛はそれを目覚めさせ隷属させることが出来る。
この丘の上から森の小屋まで、一体どのぐらいの距離だろう。歩くときっと時間が掛かる。飛んでいこう、空は自由だ。
「“{
ギルドの扉を開いて、聖愛は書の中から呼び出した一枚のカードを目覚めさせる。聖愛の背丈よりも大きな鷹が目覚め、聖愛の目の前に現れて咆哮を上げた。ギルドの中から様子を伺っていた男達が驚いたように
聖愛はそれを気にせずに、飛び立つ鷹の足に捕まり森に向かって飛び立った。
さて、森にまで飛ぶことは出来たがどうやってこの森の中から小屋を見つけようか。悩む聖愛とは裏腹に、鷹は一直線に森の一箇所へと向かっていく。
「……あぁそっか。帰巣本能か」
ならばこの魔神を選んだのはピッタリだったかもしれないと、聖愛は頷く。
「——おかえりなさい」
「——ただいま」
やがて、帰宅した小屋は美味しそうな匂いで満ちていた。魔神を再び眠らせて、小屋の扉を開く。小屋の中には、キッチンに立つメリンダが鯛で美味しそうな料理を作り聖愛を待っていたのであった。