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次の街へ!

 マルクエン達が海を堪能している頃、あの奇術師の魔人が誰かと話をしている。


「ミネス、お前はコンソをった例の転生者達を倒すつもりがあるのか!?」


 奇術師をミネスと呼ぶ男は苛立いらだっていた。


「まぁまぁ、そう言わないでよクラム! 何も殺すだけが倒すってわけじゃないよ?」


 ミネスはあっけらかんとした感じで続ける。


「ボクはあの子達を気に入っているんだ。魔王様だって、出来れば仲間にした方が良いと思っているよ、きっと!」


 その言葉に納得がいかないのは、クラムという魔人の男だ。


「オレは俺のやり方でやらせて貰う。どんな手を使おうが倒してしまえばいい」


「あー、それじゃ新しく出来たボクのおもちゃを使ってみる?」


 ミネスが指を鳴らすと、手のひらに小さな箱が現れた。


「何だそれは」


 クラムはよく分からないまま、それを差し出される。


「きっとクラムも気に入ってくれると思うよ?」





 魔人達の会合が行われているなんて知らずに、海で遊び疲れて眠ってしまうマルクエン。


 日に焼けたせいか、肌がピリピリとする。


 この世界が大変なことは分かるが、海は楽しかったなと思い返していた。


 翌日、ホテルのロビーに向かうと、ラミッタ達が先に待っている。


「遅い、宿敵!!」


「いや、悪い悪い。でも集合時間前じゃないか?」


「ふふっ、おはようございますマルクエンさん」


「おはよザーッス!!」


 そんな会話が終わると、シヘンがマルクエンの元へと歩み寄った。


「マルクエンさん、日焼け痛くないですか?」


「えっ? あぁ、多少ひりひりしますね」


「手をお借りして良いですか?」


 シヘンに言われ、何をするのだろうと思ったが、素直に手を差し出す。彼女の柔らかな手が触れる。


「リフレッシュ!!」


 その言葉と共に、日焼けの痛みが飛んでいく。


「お、おぉ!! 凄いですシヘンさん!!」


 目を丸くしてマルクエンは言った。


「私、これだけは得意なんですよ」


 はにかんでシヘンは話すと、ラミッタが立ち上がる。


「それじゃ出発するわよ」


 名残惜しそうに海に背を向け、マルクエン達は街を後にした。





「それでラミッタ。次は何処へ行くんだ?」


「周辺の地図は買っておいたわ。今度はこの近くの街を経由して、大きな街に行くわよ」


 地図を広げてラミッタが言う。なるほどなとマルクエンは後に付いていくことにする。





 しばらく道を歩き、中継地点の街付近までたどり着く。


「さてと、それじゃここで休憩……」


 そこまで言いかけたラミッタの顔が険しいものになる。


「している場合じゃ無さそうね」


 ラミッタは街の方角から魔物の気配を感じ取っていた。


「魔物よ、急ぐわ」


 倍速の魔法を使い、一気に駆けるラミッタ。マルクエンも重装備と思えないような速度で走る。


「ちょっ、ちょっと待って下さいよー!!!」


 ケイはそう二人の背中に叫んでから走り出す。シヘンもその後を追いかけた。





 ラミッタが辿り着いたのは、ちょうど中継地点の街『ルカラカ』だ。


 警鐘が鳴り響き、街は大騒ぎになっている。


 魔物を確認すると、ラミッタは一直線に突っ込んでいった。


「お、おいアンタ、そっちには魔物が!!」


 駐屯している兵士は向かってくる魔物を一体一体倒していたが、突っ走るラミッタを見て叫ぶ。


 魔物とかち合うと、ラミッタは一撃二撃と剣で魔物を斬り捨てる。


 足で地面を強く踏むと、そこら中から土の槍と雷が打ち上がった。


「なっ!?」


 それを見ていた兵士は驚きの声を上げる。上級の冒険者だろうかと考えていた。


 少し遅れてマルクエンも街に到着する。汗の一滴も垂らさず、ラミッタの加勢に入った。


「宿敵!! 遅いわよ!!」


 ニヤリと笑いながらラミッタは敵の数を減らし続ける。


「あぁ、すまんな」


 マルクエンの大剣は一振りで三体もの魔物を斬り捨てた。


 たった二人で前線を押し上げる。街に居た冒険者や兵士はその後に続く形となった。


 様々な種類の魔物を蹴散らしながら行くと、緑色に光る箱が見える。


 そこから魔物が現れだし、こちらへ向かってきた。


「な、何だアレは!?」


 マルクエンが驚いて言うと、ラミッタも呟く。


「分からないけど、素敵なプレゼントボックスじゃない事は確かね」


 ラミッタが氷魔法を飛ばし、箱を攻撃する。わずかに外側がへこんだのが見えた。


「宿敵!! そっちは任せるわ! ぶった斬ってきなさい!」


 回りの魔物を片付けながらラミッタは言う。マルクエンは雄叫びを上げながら箱へ向かい走る。


「どりゃああああ!!!」


 筋力強化を使い、数十倍の力で剣を箱に叩き付けた。


 すると、箱は砕け散り、魔物が現れることも無くなる。


 後は残った魔物を掃除するだけだなと、マルクエンも戦いに戻った。





「これでラスト!!」


 最後の一匹を斬り捨てラミッタはふうっとため息をつく。


「ふぅー、いい運動になったわ」


「あぁ、そうだな」


 そんな事を二人が言い合っていると、上空から声が聞こえる。


「まさか、こうも早く転生者が来るとは」


 驚いて上を見る二人、気配すら感じ取れなかった。


「アンタは……。魔人!?」


「いかにも」


 どうやら今までに会った事の無い魔人だ。


「そう、だったら降りてきなさい。ぶっ倒してあげるわ」


「ふん、人間の指図など受けぬ」


「ふーん、それじゃそのまま倒してあげる」


 ラミッタは手から火の玉を打ち出す。魔人はかわそうとするが、火の玉は後をずっと追いかけ続ける。


「やはり、中々やるな。小賢しい」

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