腰の辺りを土壁でガッチリと固定されたシチは、出ようと飛び出ている上半身の腕を伸ばし、手で土壁を押すが、びくともしない。
シチは手から攻撃魔法を出そうとするが、魔力が吸い取らるのかうまく発動が出来ず。同じ様に捉えられた手下も土壁から抜けずにいた。
「さーて、後は首を落とすだけね」
「ひっ」
小さくシチは悲鳴を上げた。剣を手にラミッタが一歩一歩こちらへやって来る。
「その辺で勘弁してやれラミッタ」
マルクエンの言葉に振り返る。そしてはぁっとため息を付いた。
「宿敵、甘いわね。コイツは温泉宿であなたを吹き飛ばしたのよ?」
それを聞いてマルクエンはその時の事を思い出して目を逸らす。
「まぁ、それはそうだが。でも許してやってくれ」
ラミッタはシチ達をチラリと見て、剣を鞘に納める。
「首無しの死体を引っ張っていくのも面倒だしね」
その言葉に思わずシヘンも安堵した。目の前で人の首が
「あの土も解除してやってくれないか?」
「私に命令しないで宿敵」
口ではそう言いながらもラミッタはまた地面を強く踏んだ。そして首を傾げる。
「あれ、おかしいわね」
再度、足で踏むが、土壁が壊れる気配は無い。
「あの女の魔力が加わってガッチガチになっちゃったかも」
「何っ!?」
「もしかしてこれ、引っ張り出すしか無いっスかね」
そう言われてマルクエンは頭をかきながらシチの元へと向かう。
「ラミッタ、そっちのちっこい子を頼む」
「誰がちっこいだ!!」
手下の女はギャーギャー怒っていたが、マルクエンは、ハハッと笑って土壁の後ろに回り、シチの下半身側へと立った。
「引き抜けないかやってみる。触っても良いか?」
そう言われ、シチは赤面する。
「し、仕方ないわね!! 下僕、特別に私の体に触れることを許可するわ!!」
「そりゃどうも」
「あのっ、そのっ、や、優しくしてよね」
シチの腰の辺りを掴んでマルクエンは力を込めて引っ張った。やむを得ず、尻にマルクエンの腰が当たる。
「い、痛い痛い!!」
「す、すまない。痛かったか?」
思わずマルクエンは手を離した。
「大丈夫、もっと強くして」
「あぁ、分かった」
またも力を込めて引っ張るマルクエン。シチは涙目になりながら歯を食いしばって耐えていた。
「あ、ちょっと動いたのが分かるわ」
「本当か? 一気に出すぞ!!」
うーんと力を込めると、ビンのフタのようにスッポーンとシチが抜けた。勢いあまってバランスを崩し、地面に仰向けで倒れるマルクエン。その上にはシチが馬乗りになっていた。
「何か、頑張って人助けしているのに、ヤバいことしているような気になるっスね……」
ケイは苦笑いしている。シヘンも何故か顔を赤らめてもじもじしていた。