「いえいえ、遠慮なさらずに食べて行って下さい!」
シヘンに腕を引かれ、結局食事をごちそうして貰うことになる。
昨日の襲撃があったのにシヘンは笑顔を振りまいていた。マルクエンはそれを見て元気そうで良かったと安堵しているが、ラミッタは違う。
「シヘン。辛い時は無理に笑わなくて良いわ」
「そ、そんな! 無理だなんて……」
笑顔を続けるシヘンだったが、涙が一筋流れていった。
そして泣き始める彼女を、ラミッタは抱きしめる。そんな事があった後、マルクエンはラミッタに話しかけた。
「シヘンさん、元気だと思っていたが、無理をしていたのか」
「宿敵、あなたは女心が分かってないわね。モテないわよ」
「あぁ、よく言われたよ……」
いよいよ村を旅立つ時だ。燃えて炭になってしまった村の柵を振り返る。
すると、シヘンとケイが駆け寄ってきた。
「ラミッタさん! マルクエンさん! 私も、私も旅に連れて行って下さい!」
二人にシヘンは頭を下げる。ケイは心配そうにそれを見つめていた。
「えっと、私は良いのですが……。村が大変な時に大丈夫なのでしょうか?」
マルクエンに言われ、シヘンは言葉を返した。
「私、私はもっと強くなりたいんです! 村は大変ですが、私がもっと強ければ守れました! 私は大切な場所と人を守れるぐらい強くなりたいんです!」
「その気持ちは分かりました。ですが、親御様も心配なさるのでは」
マルクエンが言うと同時に、ラミッタとケイは、しまったと思った。
「私、幼い時に両親を魔物によって失いました」
それを聞いてマルクエンは肝を冷やす。
「あっ、えっと、その、申し訳ない。考えが足りない発言でした」
「いえ、良いんです! そして私は村の人達に育ててもらいました。だから私は村に恩返しがしたいんです」
マルクエンの代わりに今度はラミッタが話す。
「それならば、なおさら村に留まって復興を手伝った方が良いんじゃないかしら?」
「いえ、今の私じゃ何も出来ないって気付いたんです。だからお二人みたいに強くなりたいんです!」
そうかとラミッタは短く言ってシヘンに背を向ける。
「付いていきたいなら好きにして」
「はい! ありがとうございます! わかりました!」
「ちょ、ちょっと待ってください! シヘンが行くなら私も付いていくっス!」
二人のもとに小走りで向かうシヘンの後を、ケイが追いかけた。
「ケイ、私なら大丈夫だよ」
「いーや、お前一人じゃ心配だ。それに、私もそろそろ稼げる場所に移動しようと思っていたからね。マルクエンさんとラミッタさんが居るなら道中も安心だし」
「旅は人が多い方が賑やかで良いです」
マルクエンが歓迎すると、ケイはニヤッと笑う。
「それじゃ決まりっスね。道案内は任せて下さいよ」
こうして四人は村を後にした。