「そういやさっき、ラミッタさんがマルクエンさんの事を騎士様って呼んでて思い出したんスけど、騎士さんだったんスよね?」
あ、やっちまったとラミッタは一瞬表情が固まるが、すかさず話す。
「元騎士様ね、コイツは城の女に手を出しまくって追放されて冒険者になったのよ」
「なっ!? 私がいつそんな事をした!?」
マルクエンが言い返すが、ケイはうわーっと引く。ラミッタはべーっと小さく舌を出していた。
「気を付けなさい。そいつはド
「え、えっ!?」
シヘンは何故か顔を赤くし、マルクエンが言葉に噛みつく。
「誰がド
マルクエンとラミッタの言い合いは料理が運ばれるまで続いていた。
料理が運ばれると、マルクエンは目を閉じて祈りを捧げる。
「神々よ、お恵みに感謝します」
その様子をシヘンとケイは不思議そうに見た。
「それは……。お祈りですか?」
「えぇ、そうです」
ラミッタは「余計なことするんじゃないわよ!!」と言いたい気持ちを抑え、ケイが笑って言う。
「私たちはこうっスね。いただきます!」
シヘンとケイは両手を合わせて言った。これがこの世界の祈りなのだろうかとマルクエンは考える。
「神だとかくだらないわ。神が居たらもっと良い世の中になってるわよ」
「まー、そうかもしれないっスねー」
ラミッタの言葉にケイはそんな返事をしてハンバーグを口に運んだ。皆も同じ様に食事を始める。
「ん! 美味しいですね、このパスタ」
ギルド併設とは思えない完成度にマルクエンは驚く。王都の高級店にも劣らないだろう。
「ふふっ、田舎だから食材が新鮮なんですよ」
シヘンは嬉しそうに言った。
「本当、良い村ですね」
「いっその事住んじゃうっスか? マルクエンさん」
ケイに冗談っぽく言われると、ハハハと笑う。
「いえ、まだ私には使命がありますので。ですが、隠居したらのどかな村に住みたいですね」
「隠居だとか、何ジジくさい事を言ってんのよ」
パンケーキをもしゃもしゃ食べながらラミッタが口を挟む。
「マルクエンさんの使命って何なのでしょうか?」
シヘンに聞かれると、答える。
「えぇ、今の所は魔王を倒すことですね」
それを聞いてケイが大きな声で笑い始める。
「魔王討伐っすか、そりゃ良いっスね!! 夢はでっかくってね」
「えぇ、大変でしょうが、やるしかありません」
真面目に言うマルクエンを見て、冗談で言ったのでは無いことを察し、ケイは笑うのを辞めた。