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「お、お前、生きていたのか!?」


 マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。


「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」


 互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。


「お知り合いなんですか?」


「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」


「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」


 ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。


「いや、決してそんなものでは」


 そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。


「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかってきた!!」


 その言葉を聞くと、ラミッタは一気に凛とした顔になり、外へと飛び出す。


「ま、待てラミッタ!!」


 マルクエンもその後を追って村の外へと走っていく。


 一緒に付いてきたシヘンとケイはその光景を見て絶望した。


「な、なんスかこの数は!!」


 思わずケイはそう言う。百にも及ぶゴブリンと、その後ろにはカニや犬、カマキリの魔物が続いていた。


 村には衛兵が三人いるが、とても太刀打ちできないだろう。それどころか、村にいる冒険者達を合わせても無理だ。シヘンは杖を強く握ってポツリと言う。


「さっきのゴブリンは……、もしかして先遣隊だったのでしょうか」


「そうかもしれませんね」


 マルクエンが大剣を引き抜いてシヘンの言葉に答える。その正面ではラミッタが魔物の群れと対峙し、振り返らずに言った。


「宿敵!! 一時休戦よ!! アイツ等をやるわ!!」


「あぁ、分かった!!」


 その提案にマルクエンは同意し、二人は魔物の群れに走っていく。


「マルクエンさん!! いくらマルクエンさんが強くてもこの数は!!」


 シヘンは止めようとマルクエンの背中に叫ぶが、止まらない。


 敵に近づいたラミッタは炎の玉を左手から打ち出す。着弾すると、そこを中心に大きな爆発が起きた。吹き飛ぶゴブリン達。続いて雷の魔法で感電させ絶命させる。


「うおおおおお!!!」


 雄叫びを上げながらマルクエンはまるで小枝を振り回すかのように大剣を振るい、次々とゴブリンと魔物を切り裂いていく。


 冒険者も衛兵も、その圧倒的な力を眺めることしか出来なかった。


 ものの十分程度で村を襲撃した群れは壊滅してしまう。皆、言葉を失っていたが、ケイが最初に言葉を口に出す。


「マジか、マジっスか!?」


 白昼夢のような光景にそんな感想しか出てこなかった。


 だが、段々と状況を理解した者達から歓声が上がる。そんな注目の的であるラミッタはマルクエンに声を掛けた。


「どうやら、亡霊じゃないみたいね」


「お前こそ、本物みたいだな」


 二人は互いにニヤリと笑い顔を見合わせた。


「また一戦やり合いたいものだけど、宿敵。あなたはこの世界に来たばかりかしら?」


 この世界という言葉が気にかかったが、マルクエンは言葉を返す。


「あぁ、気付いたら森の中で寝ていた」


「私が色々説明してあげるわ」


 村へと歩みだすラミッタの後を、マルクエンは剣を仕舞って着いていく。


「ラミッタ殿、流石でした。本来であれば我々衛兵が戦わなければならないものを……、情けない」


「いえ、良いのですよ」


 衛兵に笑顔でラミッタは返事をする。


「それで、そちらの方は冒険者でしょうか?」


「いや、昔ちょっとありましてね」


 適当にはぐらかしてラミッタは冒険者ギルドに向かう。マルクエンの元にシヘンとケイもやって来た。


「マルクエンさん、やるっスねぇー!!」


 ケイに言われると、マルクエンは頭をかいた。


「そんな、大したことではありませんよ」


「マルクエンさん、お怪我は!?」


「シヘンさん。お気遣いありがとうございます。怪我はありませんよ」


 あんな大群相手で傷一つ無いことに、シヘンは驚いていた。冒険者ギルドに戻ると、中はざわつく。


「おい、さっきの男だ」


「何モンなんだアイツ……」


 マルクエンを見ると冒険者たちは口々に言っていた。そんな中、ラミッタとマルクエンの元に老人の男が歩いてくる。


「先程の戦いを見ていました。ラミッタさんは流石の活躍で。そして、そちらの男性は……?」


 老人でありながら鋭い眼光でマルクエンをちらりと見る。


「私は、マルクエン・クライスと申します。イーヌ王国で騎士を務めています」


「イーヌ王国……。あぁ、ラミッタさんが前におっしゃっていたお国ですか」


「宿敵、ギルドマスター殿も交えて話がしたいんだけど。我々が置かれた状況についてね」


 ラミッタが言うと、マルクエンは頷いた。今はそれしか選択肢が無いだろう。


「わかった」


 ギルドマスターに付いていくと、二人は奥の応接室へと案内された。


「どうぞ、おかけ下さい」


 マルクエンとラミッタはギルドマスターの対面にあるソファに隣同士で座る。マルクエンはラミッタの顔をちらりと流し見た。


 あの戦場でしか会わなかった彼女が隣で座っているというのは何とも奇妙な感覚だ。


 そして、そのラミッタが話し始める。


「さて、私は長い話が苦手だから単刀直入に言うわ宿敵。今いるこの世界は、私達がいた世界と別の世界なのよ」


 真面目に話す顔を見て、冗談ではないのだろうとマルクエンは思ったが、理解が追いつかない。

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