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35 ハルキ・アーレス 直接対決③

「大人しくワタクシとオパールに投降し、この国を明け渡しなさい。そうすれば、エルフ達の命は保証しますわ」

「それにね、世界が滅びない程度の豊穣は保って貰っていいよ。適度に邪素を放つ植物くらいは創って貰うけどね。ふふふ」


 冷淡に要求を告げるルルーシュと、無邪気に嗤うオパール。女王メーテリアは障壁で自身を護ったまま、彼女達の要求を黙って聞いていたが、やがて笑顔でこう答えた。


「お断りしますわ。私の可愛い子供エルフ達を悪魔にされては困りますもの」

「なーーんだ。バレてたか。じゃあ、しょうがないか。女神を弱らせて、僕の下僕しもべにしちゃおうかな?」


 幼女がそう言った瞬間、隣に居たルルーシュが日傘を頭上へ掲げる。上空より黒い閃光が飛来したかと思うと、闇を吸い込んだかのような漆黒の肌に紅いビキニと蒼いビキニを纏った耳の長い女の子が二人出現する。


「リップ……セリカ……」


 女王メーテリアが呟く。メーテリアを見つけた女の子達は、紅く染まった双眸を輝かせ、女王の前へ躍り出る。


「メーテリア様ぁ~~。わたしたちぃ~~生まれ変わったのぉ~~」

「これからはルルーシュ様の傍でぇ~~自分の気持ちに忠実となって生きようと思いま~す!」


 彼女達の身体から漏れ出す邪素。ダークエルフとなった彼女達は、俺の存在に気づき、こちらへと近づいて来る。


「あれぇ~~、いい男が居るよぉ~~? ねぇねぇ~~あなた、わたしたちとイイ事しない~~?」

「きっと今迄になく気持ちいい快感を体験出来るよぉ~~?」


 彼女達へ槍先を向けた事で彼女達の動きがピタリと止まる。


「お断りします。願わくば君達とは戦いたくない」


 目を閉じ、ゆっくりと首を振る。こんな戦い、狂ってる。


「へぇ~~。いいよ~~そういう事なら遊んでアゲル♡」

「威勢のいい男、好きだよぉ~~?」


 彼女達が紅いマニキュアを塗った爪を伸ばし、ゆっくりと距離を詰め、俺は少しずつ後退する。ルルーシュとオパールは黙ってその様子を静観している。舞台の端へ追い詰められた時、突如、翠色の蔦に彼女達の身体が覆われる。蔦は繭のように彼女達の身体を包み込んでいく。


「ハルキ・アーレス。心配要りません。彼女達と戦う必要はありませんよ」


 メーテリアが左手を翳している。彼女が掌を閉じた瞬間、完全にエルフ達の身体は蔦へ覆われる。


「なにこれぇ~~~動けない~~助けて~~」

「メーテリア様ぁ~~~どうしてぇ~~」


 翠色の繭に覆われた彼女達の身体が水晶のへと沈んでいく。やがて、彼女達はメーテリアの手によって、強制的に水晶の舞台より離脱する。


「へぇーー、どういうつもりかな? 女王様」

「創星樹による浄化の力であの子達を元に戻します。一日もすれば彼女達は元通りですよ? オパール、幾ら貴女の能力でもね」


 オパールは無邪気な表情を崩さない。刹那、燻っていた蒼い炎が舞台上、大樹の幹へと燃え広がる。


「あら、怒りに任せてはいけないのではなくって、オパール」

「え? あれぇ~~勝手に炎が燃え広がっちゃったぁ~~僕、知~らないっと」


 消える事のない蒼き炎が大樹を燃やしていく。このままでは豊穣を司る創星樹が燃えてしまう。俺がそう思った直後、女王が両手を軽く叩く。蒼き炎を透明な水泡が包み込んでいき、燃え広がる炎を遮っていく。光る水泡が輝くシャボン玉となって、大気へと流れていく。蒼い炎はシャボンの中へ閉じ込められている。やがて、シャボンがエルフの国を燃やしていた蒼炎あお全てを包み込み、邪素そのものを閉じ込めていく。


「へぇ~……やるねぇ~~豊穣の女神様」


 初めてオパールから笑顔が消えた。漏れ出す邪素は人間を押し潰すに充分な量。ガーネットの香りが無ければ、俺はこの舞台にすら立てなかったかもしれない。


「あなたたちの思い通りにはいきませんよ!」


 メーテリアが再び両手を叩いた瞬間、水晶の舞台が振動し、上空へと競り上がっていく。創星樹が動いているのか? 舞台はぐんぐん紅く染まった空へ向かって上昇していく。水晶の舞台も横へと広がっていき、エルフの国を遥か下へ見据え、天にも届きそうな天空の舞台が此処に完成した。


「なにこれ? メーテリア、どういうつもりかな?」

「自ら滅ぼされる舞台を用意したのかしらね?」


 虹色のドレスを纏った幼女の瞳が妖しく光っているが、女王は全く動じない。


「残念でしょうが、あなたの能力、私には効かないわよオパール? それにルルーシュ。滅ぼされるのはどちらかしらね?」


 オパールの発する邪素とメーテリアが掌から放つ光の波動が激しく衝突する。光と闇、相反する力がぶつかる反動で、こちらも吹き飛ばされそうになる。二人の様子を見ていたルルーシュが天より氷の刃を出現させ、メーテリアへ放つ。俺は槍先より火球を数発放ち、上空にて氷の刃を相殺していく。


「あなた……邪魔ね」

火星焔槍マーズスピア――火焔流マーズストーム!」


 無数の氷刃を火焔流で相殺し、巻き起こる炎がルルーシュの体躯を包み込む! 日傘を開いて身を守っていたルルーシュが、日傘を投げ捨てる。妖しく染まった瑠璃色の肌。赤紫色の髪は腰より下まで伸び、黒光りしたビキニアーマーとガーターベルトは妖艶な姿を強調させるものだった。長く伸びる蠍の尻尾を手に持ち、上級悪魔は舌なめずりをして嗤った。


「そう……そんなにワタクシと遊んで欲しいの? いいわ、凍える程の快感キョウフをあなたにアゲル♡」

「少しは戦場で踊ってくれよ、ルルーシュ・プルート。俺の熱はそう簡単に冷めないぜ?」


 俺の火焔と悪魔の氷刃。相反する力がぶつかり合う!


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