『じゃあ、そちらへ私の代わりとなる人材を手配しておきます。明朝、迷宮近くセントラリア公園の噴水広場前集合で』
『メイちゃん、おいらの代役も紹介するっすよ、これで迷宮攻略はクリアも同然っす』
「貴方に〝ちゃん付け〟される筋合はないわ。だけど、ヴェガもサンストーンさんも感謝するわ」
加護者と守護者を通じる意思伝達でサンストーンさんと繋いでいた回線を切る私。横で回線を
「コレデナントカナリソウダナ、メイ」
「仲間編成四名一組だなんて、ギルドも面倒な条件を課したものね」
冒険者ギルドを出て、頼れる
「我ハ今回迷宮ヘハ赴カンゾ、メイ」
「あら、珍しいわね。姫を護るとかいつも言ってる癖に」
黒猫が私の肩から飛び降りる。どうやら何かを見つめている。視線の先には……白猫? 白猫はすぐ人混みに紛れ、姿を見失う。
「知り合い?」
「カモシレン」
「もしかして猫の彼女?」
「ドウシテソウナル」
トルマリンに猫の知り合いなんて居るのね。この時私はそれ以上深くは詮索しなかった。
翌日私は、セントラリア公園噴水広場にて、新しいパーティメンバーと出逢う。
「トルクメニアン国、王宮執事を務めております、ブレアと申します。お話はサンストーンより聞いております。以後お見知りおきを」
サンストーンさんの紹介で隣国より此処を訪れた女執事のブレアは一見男性のようにも見える中性的な顔立ち。ショートボブの黒髪に、透き通るような黒曜の双眸。整った燕尾服に朱の蝶ネクタイを身につけた彼女は、隣国トルクメニアン国の王宮にて女執事をしているそうだ。表向きは……。
『彼女の正体は山羊座の守護者です。その能力も守護者としての力に準じます。表向きは王女様へ仕える女執事ブレア。裏の仕事は、秘密裏に国家を脅かす者を暴き、粛清する事です』
サンストーンさんからはそう聞かされていた。この後
「スピカ警備隊所属、
モフモフした毛並が特徴の二人はヴェガの後輩という訳ね。それにしても真っ直ぐな子ね。あまりにも直立だったため、解してあげようと試しに頭へ手を触れてみる。
「……そんなに緊張しなくてもいいのよ。メイ・ペリドッドよ。よろしくね」
「ふわぁ~~美女にモフモフされると安心するであります~」
全身真っ白のモフモフした頭を撫でてあげると、直立不動で硬直していたポックルの全身から力が抜け、開放されたかのように私に身体を預けて来た。すると、横に居た
「あきちも~~! あきちもお姉さんにナデナデして貰いたいの~~! あ、あきちはシルバニアだよっ! 見ての通り人狼族だよっ! よろちくなんだよっ!」
「よろしくね、シルバニア」
私に擦り寄って来る二人のモフモフ。モフモフに触れていると私も心無しか穏やかな気持ちになれた。
「メイハ我ノパートナーダ。余リ近寄ルデハナイ」
「ふへぇえ!? 黒猫が喋ったであります!」
「この黒猫なんなんだよっ!」
突然眼下で話しかける黒猫の存在に、私の腕から抜け、素っ頓狂な声をあげるポックルと飛び上がって驚くシルバニア。嗚呼、このエロ黒猫の事はこの子達に補足しておきましょうか。
「私のパートナーである黒猫のトルマリンよ。安心して。私と敵対しなければ危害を加える事はないから。で、トルマリン?」
「……ナンダ?」
不貞腐れたように肩を竦めたような態度を取る黒猫へ私はひと言。
「……貴方もモフモフしてあげましょうか?」
「断ル」
正体が死神というこの希少な黒猫も、嫉妬する事があるのかしらね。興味深い現象ね。黒猫はそのままブレアの傍へ歩み寄る。そう、彼女が山羊座の守護者ならば当然……。
「ご無沙汰しておりますトルマリン。お元気そうでなによりです」
「オ前モナ、ブラックオニキス。迷宮ニハ我ハ行カヌ故、メイヲ頼ム」
「承知いたしました。お任せ下さい」
やはりトルマリンとブラックオニキスは昔馴染みのようね。あのトルマリンがこうもあっさり他人に頼み事を……それだけブラックオニキスが信頼における存在という訳かしら。
こうして私は女執事ブレア、犬耳族ポックル、人狼族シルバニアと共に迷宮攻略