翌日僕達パーティは迷宮探索へ出発した。見上げる程の迷宮の巨大な入口。冒険者を待ち受けるべく開いた巨大な
「ここがアルシューン名物の巨大迷宮なんですね」
「そうだよカルア。でも心無しかいつもより
アルシューン公国西部に位置する巨大
「何だか不穏な空気が漂ってますねぇ。こういうの苦手です……」
「大丈夫よぉ~~ん♡クレイ様が魔物なんてぇ~~♡やっつけてくれるわぁ~~ん」
そう言いつつ腕を絡めてくるナナコに苦笑する僕。
「うぅ……不穏な空気よりもあなたみたいなタイプの方が苦手かもです……」
「あら~~言うわねぇ~~ぴょんこちゃん」
「ぴょっ!? ぴょんこちゃん!?」
「その触角みたいな髪がぴょこぴょこして可愛いからぴょんこちゃんよ?」
カルアの尖った耳がピンと立つ代わりに、鴬色のツインテールは萎れた花のようにへなへなっと頽れていた。
「普通にカルアでいいですから……それにナナコさんのが兎耳でぴょんこな気がするんですが……」
「まぁまぁ、ナナコもカルアを
ナナコとカルアを促し、僕達パーティはいよいよ迷宮の中へと入る。
全十二階層からなる迷宮は、最下層より溢れる
「序盤はいつもの迷宮攻略と変わらないでやんす。問題は後半でやんす」
「異常が起きて以降、迷宮に挑んだあんたの経験は貴重だ。参考にさせて貰うよ」
「皆さん。な、何か来ますよ!」
第一階層は比較的天井も高く、火創星魔法による灯りも設置された洞窟となっている。正面より、
「あまりに遅くて欠伸が出るよ」
「この位、準備運動にもならないでやんす」
僕が五指よりビー球のような水戟を放つと、水の
「いやぁ~~ん♡この糸~~
「ちょっとナナコさん! 何捕まってるんですか。火の精霊よ、うちに力を! 火精霊――ルビー・スピリット!」
カルアが瞳の色と同じ、夕陽のように煌めく宝石を先端に嵌め込んだ杖を掲げ、粘りの糸でナナコを縛ろうとしていたエビルスパイダーへ向けると、丸い光球のような塊が宙を舞い、エビルスパイダーの周囲を旋回する。突如蜘蛛の魔物は炎に包まれ、消し炭となって消滅した。
「大丈夫ですか、ナナコさん」
「あら~ん♡助けてくれたの? ぴょんこちゃん♡ありがと~~」
熱により糸が解け、解放されたナナコがカルアへ飛びつき、朱いバニースーツに強調された果実を押しつけている。
「や、やめてくださいーーた、たしゅけてぇえ~~」
そのまま追いかけっこを始めるナナコとカルア。
「あれは……羨ましいでやんすね……」
「あの子は常にあのテンションだからねぇ……」
常に発情期状態のナナコを見つつ、苦笑する僕。尚、カルアの横を先程召喚したルビー・スピリットという火属性の精霊らしき火の球が併走しており、この後数体出現したゴブリンは全て僕とキルギスが攻撃する前にゴブリンの丸焼きにされていた。下位精霊であの威力か……。精霊使い、凄いな。
第二階層は同じく洞窟フロア、第三、第四階層は遺跡のような石造りの外壁に囲まれたフロア。初級種に加え、インカローズを使うゴブリンメイジ、巨大化した耳を回転させ飛行する鼠型の魔物――ミミトビマウス、粘液で対象を溶かすグリーンスライム等、低位種の魔物が出現する。
「いや~ん♡私の服溶かしちゃい……」
「ルビー・スピリット!」
ナナコの服を溶かす前にカルアがグリーンスライムを燃やし尽くしていた。この後カルアへナナコが飛びついた事は言うまでもない。
「いや~ん、服が溶けたでやんすー!」
キルギスの黒いマントの一部が溶けたらしいが、とりあえず放っておいて問題無さそうだ。
そして、第五階層、下へ降りる階段の前には
「気をつけるでやんす。この階層から
「見て下さい……誰かが魔物と戦ってます!」
全身紫色の鍛え抜かれた体躯、腕には槍を構え、禍々しい邪素の瘴気を蓄え魔物化した
「あらー? 助けた方がいいのかしらーん?」
ナナコがそう呟いた矢先、数体のエビルオークが後方へ吹き飛ばされる! ゴスロリ衣装の上半身、魔女っ娘スカートを身につけた女性が掌から氷の刃を出現させていた。
「「創星魔法、氷結力・フリーズバレット!」」
「いや、ナナコ。その必要は無さそうだよ。……やっぱりメイちゃん来ていた……えっ!?」
数体のエビルオークが吹き飛ばされた事で冒険者パーティの様子を確認した僕は、思わず驚嘆する。そこには、僕のよく知る天秤座の加護者――メイ・ペリドッドが背中合わせに