目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
11 クレイ・アクエリアス 迷宮攻略②

「うちは精霊使いエレメンタラーのカルア・ヘルメス。冒険者ランクはシルバー。種族は見ての通りエルフです」

「僕の名前はクレイ。職種は星魔士マナヴィザード。種族は見ての通り人間さ」


 表で冒険者として活動するにあたって、僕は水戟創造の戦闘スタイルを周囲へ違和感なく見せるため、星魔士という希少な職種で冒険者登録をしている。魔女である事を隠したメイは魔法メインの戦闘を可能とするため、魔導師として登録しているみたいだね。


「えええ、えー? まままマナヴィザードって、〝魔法以外の力〟で星屑を練り上げる限られた人しかなれない希少種じゃないですか!」

「分かりやすく驚いてくれて僕も嬉しいよ」


 リアクションが大きいエルフのツインテールがピョンピョン跳ねる。しかし、精霊使いエレメンタラーか。偶然・・とはいえ、中々面白い子を拾ったもんだ。精霊を使役、或いは精霊の力の一部を取り込んで戦う精霊使いは、これまた希少種だ。さすが魔力の扱いに長けたエルフの冒険者と言える。


「そういう君も、精霊使いはなかなか希少だね。シルバーランクなら、今回の依頼クエストの条件も満たしているし。後はギルド奥の集会所でパーティを探すとしようか」

「えへん。でしょうでしょう! 伊達に冒険者やってませんから。うちもお友達とはぐれて・・・・・・・・しまったので丁度よかったのです」


 僕とエルフのカルアは、冒険者同士の待ち合わせやパーティ探しに皆が利用する、ギルド内の集会所へと向かう。


★依頼受付No.×××AG02678

『◇依頼内容:アルシューン迷宮の探索

 ◇目的地:アルシューン公国西、アルシューン迷宮

 ◇依頼主:冒険者ギルド運営本部直轄クエスト

 ◇受注条件:冒険者ランクシルバー以上

      :四名一組のパーティ必須

 ◇受注可能パーティ:同時に3組迄


※各依頼達成条件及び報酬:

①十階層以内の魔物討伐数に応じて報酬

初級種ラブグレイド……銅貨一枚/十体

低位種ローグレイド……銅貨二枚/一体

中位種ミドルグレイド……銀貨一枚/一体

高位種ハイグレイド……銀貨五枚/一体

②十階層ギルドパネル到達 ……金貨一枚

③十一階層以下の調査

・異変の元凶となる魔物の調査

 元凶を発見し、尚且つ討伐した際には相応の報酬を与える者とする


以上』


 これが今回の依頼内容だ。あの迷宮は地下十階の休憩地点で引き返すのがセオリー。今回地下十階より下の調査をギルドが直接依頼したという事は、迷宮に異常が起きている何よりの証拠だ。


 地下十階前後に潜む高位種のミノタウルスやヒートリザードあたりを倒せばそれだけで銀貨5枚。討伐して肉や皮を持ち帰るだけでも相当な資金源になるところ、更に報酬が貰えたなら……。そりゃあ冒険者達が群がる訳だ。


「でも、この依頼クエスト。こんなに報酬たくさん貰えるのに、どうして今回募集枠余ってるんですか?」

「あら、カルアは知らなかった? この依頼受けた冒険者が相次いで負傷、更には行方不明者も出てるって事」


 負傷者や行方不明者が出ているのはここ最近の話。知らなくて当然か。


「えぇーー? そうだったんですか?」

「ん? 引き返すなら今だよ?」


 一抹の不安を払拭するかのように首を振るカルア。


「とんでもない。うちは引き返しませんよ。こここ怖くなんてないですから」

「まっ、僕が居るから心配しなくとも大丈夫さ」


 カルアが照れ隠しで軽く目を反らしたところで、如何にも怪しい黒フードを目深に被った男が僕達の傍へ近付いて来た。


「あんたら、その依頼、受けるでやんすか?」

「そうだけど、あんたは?」


 笑顔を消し、胡散臭い黒フードへ話しかける僕。


「あっしはキルギス・グルー。銀ランクの盗賊シーフでやんす。迷宮には罠がつきもの。あっしを連れて行った方が得策とは思わないでやんすか?」

「思わないね。あんた犯罪者の臭いがプンプンするしな。行こうか、カルア」


 危険な道をいつも渡り歩いているから、そういうものには敏感なんだよね、悪いけど。


「待つでやんす。言うでやんすねぇー。分かりやした。正直に言いましょう。あっしの親分が、前回この依頼で迷宮に取り残されてしまったでやんす。あっしは、親分を助け出したいでやんす!」

「へぇー。そんな状況で、どうやってあんたは逃げ出したんだ?」


 あくまで警戒を解かずに質問する。カルアは僕の背後へと回っている。


「これでやんす。盗賊御用達の脱出用魔法具マナファクター。これで親分があっしを助けてくれたでやんす!」

「報酬は山分けで問題ないな? 裏切り行為はナシだぜ?」


 ある程度、戦闘が出来る仲間が必要な事は確かだ。どうやら身体に武器を隠している・・・・・ようだし、悪意を隠せるあたり、ある程度の実力は兼ね備えているようだ。


「勿論でやんす! あっしは親分の無事が分かればそれでいいでやんす!」

「クレイさん、こいつ、信用して大丈夫なんですか?」

「嗚呼、信用はしていないけれど、使えるのは間違いなさそうだ。そのマントの中へ仕込んでいる武器も使えそうだしね」


 僕の発言に苦笑する黒フード。


「あんさん、中々やり手のようですね。このキルギス、お役に立てるよう、お供しますぜ!」

「分かった。僕はこの仲間のリーダー、クレイだ。よろしく」

「いつの間にクレイさん、リーダーに? まぁいいです。うちの名前はカルアです。よろしくお願いします」


 これで三名。あと一人は……。もう近づいて来てるな。


「クレイ様ぁ~~~ん♡アメジストから冒険に出るって聞いて飛んで来ましたぁ~~ん♡」

「げっ、この兎耳族バニー何なんですか?」


 耳と尻尾をクネクネさせた兎耳の女の子が身体を刷り寄せつつ僕の周囲を廻っている。


「嗚呼、この子はね。元々僕がよく行くラピス教会で育った兎耳族バニーのナナコって言うんだ。こう見えてもシルバーランクの回復士ヒーラーだから、間違いなく役に立つよ」

「あんさん、何てうらやまけしからん光景……」

「それは分かりましたから、バニーさん。ちょっとクレイさんから離れて下さいよ。ふ、不潔ですからっ!」


 アメジストがどうやら心配してこの子を寄越したらしい。一日中発情期みたいな子だが、実力は本物だ。これで四名揃ったな。


「あら~~そこのエルフちゃんも可愛いわねぇー。ワタシわぁ~ナナコって言うの。よろしくね~♡」

「わわわ……待って……近づかないで下さいませぇえええ~~」


 こうして迷宮探索へ向け、僕の即席パーティが完成した。さて、メイちゃんがどんな仲間パーティを揃えて来るか、楽しみだな。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?