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09 ハルキ・アーレス 最強執事?登場④

 その日、王女を無事に送り届けたお礼として、王宮での会食へ招待され、普段食べられないような宮廷料理を堪能した俺は、ガーネットと久し振りの自宅へと帰って来ていた。


「いやぁ、旅は楽しいけど、自宅がやっぱり落ち着くね」

「私はハルキと一緒なら、どこだって落ち着くわよ?」


 お姉さんは相変わらずノリノリだ。よくこのテンションを保てるものだと感心する事もしばしば。


「それにしても、ルルシィさんが依頼するなんて、びっくりだよね……」

「まぁ、ハルキは有名人だしね。故郷の一大事を知って、ハルキしか頼れる存在が居なかったんじゃないかしらね?」


 あんな美人のお姉さんに依頼されるなんて、俺も鼻高々である。そう思っていた矢先、一瞬メイの顔が脳裏を横切ったので慌てて首を振る。


「ねぇ、ガーネットはそのエルフの国へ行った事はないの?」

「私も長く生きているけど、エレメンティーナは行った事がないわね。あそこは他国からの干渉を拒む国。女王に気に入られないとハルキ、闇を晴らすどころか女王に殺されるでしょうね」


 え? 女王って、そんなに怖い存在なんですか……。


「ま、とは言え、あそこには私もよく知ってるカルア・ヘルメスとカーネリアンって言う乙女座の加護者と守護者が居るから、あの子達を訪ねる事にするわ」


 何かさらっと新たな加護者と守護者の名前が出て来たんですけど……。スミスとブラックオニキスといい、意外と身近に創星の加護者って居るものなんですね……。


「ガーネットさん。それだけ色々知ってるんなら、闇に潜む黒幕的・・・な相手を皆で倒しに行くのが一番手っ取り早いんじゃ……」

「ハルキはまだまだ甘いわね。世の中そんな簡単に物事は進まないモノなのよ」


 ガーネットは一体何を考え、行動しているのか。やはり彼女は底が知れない。


「分かったよ、ガーネット。俺は眼前に与えられた試練を一つずつクリアしていくさ。いつかメイに認めて貰うためにね!」

「その意気よ、ハルキ。頑張ってね!」


 メイとの一時ひとときの別れ、トルクメニア国帰還からの新たな加護者と守護者との出会い、ルルシィさんからの依頼。怒涛の一日は終わり、その日は疲れていたのか、ぐっすり眠る事が出来た。



 そして、翌朝……。


 旅の支度を整え、俺とガーネットは家を出る。

 今回スミスとブラックオニキスは別行動となる。スミスは王女の護衛と城での仕事。ブラックオニキスは知人より意思伝達があり、後日、影での仕事が控えているらしい。


「ルルシィさん! 今日もいい天気ですね!」

「おはようございます、ルルシィさん」

「ハルキさん、ガーネットさん。帰って来ていたのですね! お帰りなさい。あ、あの……」


 玄関先を箒で掃除していたルルシィさんが耳をピクピクさせ、豊満な果実を上下運動させたまま駆け寄って来た。そして、何か言いたげな物憂いでモジモジし始める。きっと依頼の事だろう。


「ルルシィさん、依頼の事でしょう? お手紙、ちゃんと読みましたよ」

「エルフの国が大変な事になっているんですって?」

「ごめんなさい。故郷から先日連絡がありまして……。どうやら異変が起きているみたいで……。ごめんなさい、無理なお願いとは分かっています。依頼料は女王様へ掛け合って弾んで貰うようにしますから……お願いします、私の国を助けて下さい」


 こんな可憐な乙女が頼んでいるんだ。依頼を受けないなんて選択肢は存在しない。


「心配要りませんよ。ルルシィさん! 俺がエルフの国に起きている異変、解決してやりますよ!」

「あ、ありがとうございます!」


 ルルシィさんの両手を握り、依頼を快諾する俺。エルフのお姉さんの顔が、ぱぁっと明るくなったとほぼ同時、握る両手へ向け、手刀が振り下ろされる!


「はいはーい。という訳で依頼は受けます。ルルシィさん、依頼料の件、ちゃんと女王へ伝えておいて下さいね」


 一瞬、俺へ向けた彼女の視線は背筋が凍る程冷たかった。メイとのデートは了承した彼女だが、ルルシィさんへ何故か闘争心を燃やしているような気がするのは気のせいだろうか?


「勿論です、ガーネットさん。私もお出掛けの支度をして来ます。少し待っていて下さいね」

「え? ルルシィさんも一緒に?」

「場所を行って下されば、私とハルキで向かいます故、心配要りませんよ?」

「いえ、そうもいかないのです。エレメンティーナへの秘密の入口は、エルフしか開く事は出来ませんので」


 ルルシィさんが支度をしに一旦家へ入る。ガーネットはルルシィさんが一緒は嫌らしい。彼女が家の中へと入った後、俺の守護者は彼女がついて来る事へ反対する。


「だって、あんな普通のエルフさんがついて来ても、邪魔になるだけでしょう?」

「大丈夫だよ、俺とガーネットなら彼女を護るなんて余裕だろ?」


 ガーネットを俺が説得していると、支度を終えたルルシィさんが登場する。その姿に衝撃を受ける俺と守護者。


「お待たせしましたぁ~~。冒険者の格好は久し振りで、少し服が小さくなってるかもしれないですね……」


「なっ!?」

「なんですって!」


 いつもワンピースにエプロン姿だったお姉さんは、なんと桜色のチューブトップに動きやすそうな茶色のショートパンツ。金色に輝く長い髪をポニーテールに束ねており、溢れんばかりに実った果実がチューブトップから収穫時期を主張していた。この果実は……メイよりも大きいのではなかろうか……メロンか……メロンなのか……。刹那、横からの冷気に気づき、我に返る俺。


「ハルキ……変なコト考えたら……殺すからね……」

「べ、別に何も考えてないから……もうガーネット、冗談キツイなぁ……」


 思わず生唾を呑み込んでしまった俺を肘でつつくガーネット。

 新たな冒険の始まりは、波乱の幕開けの予感しかしないのであった――――


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