「恐らくじゃが、ワシの感覚ではお前さんのおるアジア方面からルーラシードの気配を感じておる。もちろん広い範囲じゃから、その周辺の地域の可能性もあるがな」
ワシはイギリスの拠点で、携帯電話を使って小僧と話しておった。
『拠点は当分日本に置くことにするよ。アジア方面では割と規制が少なくて情報の集めやすい国だし、移動自体はいつも通り
「軸ずらしの術を使うなら、ワシと同じ拠点に居れば良かろうに……」
ワシは少し
『狐の女王様はやむを得ない時以外は寝食を共にしないんじゃなかったのかい?』
「他の並行世界で今まで何度も野宿や
ワシは勢いに任せて携帯電話の終話ボタンを押し、そのまま布団に叩きつけた。
全く、人の気も知らずに……。
◇ ◇ ◇
さて、ワシは先に述べた通り今はイギリスにおる。
この世界に着いて、レイラフォードに関してはイギリス――厳密に言えばグレートブリテンの近辺におるということが早々に判明した。
これだけ早く成果が得られたのも、様々な並行世界を周ってきて、一つ共通点を見つけていたからじゃ。今回も最初にその共通事項の調査を始めておる。
その共通事項は「レイラフォード」と「ルーラシード」という名前じゃ。
例えばレイラフォードであれば「レイ=ラフォード」、「レイディアント」、「
このように、確実というわけではないが、何かしらヒントとなる単語が含まれた名前の人物が対象になっておる事が多い。
逆にルーラシードの場合は名前から南米を中心に調べることもあれば、ケルト神話の太陽神を参考に北欧から調べることもあるのじゃが……。あとはルーと発音の近い「ロウ」や「ラゥ」という名前とか、まぁ……正直なところ、ルーラシードの方は確率がかなり低いから当たれば儲けものくらいのスタートじゃ。
それにこの世界は
ちなみに、ワシはその端の方にある世界から来ておる。それ
話は戻って、グレートブリテンの周辺におるということで、九つの尾を護身用の一本を残して一度全てレイラフォードの探索に振り分けた。
ワシの
ただし、この速度だとほぼコントロールが出来ず、探索範囲も針の先程度しかないため、実際の探索はかなり遅い速度で探索させておる。速度を落とすほど探索効果範囲や探索精度を拡大させる事が出来るから、その都度
すると、幸いなことにレイラフォードについてはすぐ見つかった。今回の対象者はズバリ『レイラ=フォード』というイギリスに住む二十代の女性じゃ。名前が同じで非常にわかりやすかった。
レイラフォードの探索が大体二年程度で終わったのは
ちょうど同じくイギリスに滞在しておったワシが追跡を続けることとし、それと同時に、ワシの
ルーラシードについては、東欧から中東、そしてアジア圏で追跡時に反応があった。非常に広範囲で移動している者か、あるいは死亡による再抽選がこの範囲で複数回行われているのかもしれぬ。
レイラフォードとルーラシードは、当代の者が死亡すると、その次の候補者を世界が抽選して決定し、次代のレイラフォードとルーラシードが決定される。
今回のように広範囲で反応が確認される場合は、長距離移動をしている者か、死亡率の高い地域で抽選後にすぐ死亡してしまうケースというのも考えられる。何にせよ、追う側の立場としては死亡から再抽選という場合が一番厄介じゃのう……。
ルーラシードを見つけるには十数年から数十年……
様々な接触方法があったが、一番自然な方法として奴の
当初は文字通り潜入しようかとも思ったのじゃが……長期間の潜入となると想定外の事態になったときに面倒な事になるのを避けたいがため、本当に大学へ入学することにした。
何ということ無い、ワシの頭脳があればどんな入学試験が難問でも余裕で解けてしまうからのう。
――と、大学に入学する方針を小僧に話すと。
「ヨーコはすぐズルをするからな、どうせまた残りの一本の矢印でカンニングしたり答えを見つけたりするんだろ。ヨーコはいつもそうだもんね」
と、ほざきよった。
またとは何じゃまたとは。そんなに言われるほど何度もズルしてはおらんわ!
大学へ行く際は、先に述べたとおり幼女の姿に化けておる。このようなプリチーな新入生に周りもメロメロじゃろうて。潜入活動は目立たないのが原則だが、ワシの魅力はどうしても
普段のワシは簡易な着物を着ているだけじゃからのう、
「
うるさいぞ! 小僧!!
「ヨーコが好きそうなフリフリで可愛らしい服装を着ること自体は否定しないけど、僕はまずは普段から髪の手入れとか部屋の掃除とかをしっかりした方がいいと思うんだ。普段のだらしない性格がどうしても内面から出てきてしまっているよ」
余計なことまで言わんでよい! 最近は割と部屋も
……全く、ワシが方針を話すと大体いつもワシに対してアレコレ小言を言ってきよる。小姑かお前は。
まぁよい。方針自体はお互いに共有できたし、潜入調査を開始するとしよう。