きっと彼は私に生きて欲しいと思っていたのかもしれない。しかし、私は何を希望に生きればいいのだろう。
一体、私にはあと何が残されているのだろう……。
私は一体、彼がいなくなるまで何をしていたのだろうか。つい数日前のことが思い出せない……。
大学へ行き、バイトをして、家に帰って食事をして、家事をこなす。大きい休みには実家へ顔を出し、場合によっては役所で母の代わりに必要な手続きをする。
そうか……。私にはまだ母親が残されていたのか……。
私が死んでしまっては、母親の面倒を見る人がいなくなってしまう。
そうだ忘れていた。母親にとって私は唯一の希望だったんだ……。
◇ ◇ ◇
翌日、久しぶりに母親に電話をすることにした。
思えば、誕生日に
携帯電話を取り出すと電源が入っていなかった。いつから入っていなかったのだろうか。
行動を一つずつ
携帯電話の電源を入れると、同じ番号から何度も着信が入っており、全てに留守番メッセージが入っていた。
メッセージを確認すると、すべて私の故郷――母が住む自治体の市役所の職員の方から「折り返し連絡が欲しい」という内容だった。嫌な予感がした。
私は慌てて市役所へ電話をした。
要件は非常にシンプルだった。母が死亡したので死亡届を書いて欲しいという内容だった。
母は二日前に交通事故で亡くなっていたそうだ。事故なのか自殺なのかはわからない。
遺体は葬儀会社が保管しているので、火葬するために親族である私に死亡届を書いてほしいという内容だった。
事務的で冷たい物言いだったが、彼らの仕事に感情が入ってしまう方がある意味問題ではある。
母が亡くなった三日前は、私が彼に出会ってあれこれ手を尽くしていたころだ。
辛い状況だったとはいえ好きな男と一緒にいる非日常を楽しんで、親の死に目に会えないだけではなく、そのまま放置していたとは親不孝者以外の何者でもない。
私はすぐに実家へ向かった。
死亡届を出し、火葬をするために母の預貯金を確認すると、預貯金は全く無くなっていた。ここ数ヶ月――私の誕生日の少し前から預貯金が急激に減っていたので、
その上で、
■ ■ ■
『本当に? もっと早く能力を使っていればわかったこともあるんじゃない?』
■ ■ ■
――違う、うるさい、わからない。誰にもわからなかったんだ。
■ ■ ■
『突然母親から手紙を貰ったのに、ただ喜ぶだけで返事もしなかったくせに?』
■ ■ ■
――仕方なかったのよ。あの時の私は彼のことで必死で……。
■ ■ ■
『あなたのせいで母親は見るも無惨な姿になっちゃって』
■ ■ ■
――火葬した母は軽くなってしまった。人の重みなんてこんなものなのだろうか。
幼い頃から私ばかり苦労して恨んでいた部分はあったが、もっと親孝行しておけば良かったと今になって思う。
■ ■ ■
『本当に? 自分の
■ ■ ■
――違う、私は私なりに母親を守り、大事に思っていた。大変な思いも沢山したけど、唯一無二の母親だったんだ。
■ ■ ■
『もしかして、これも世界からの
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――分かっている、私は見るべき大事なものを見落としてきた……。
■ ■ ■
『彼もいない。母親もいない。あとは何が残っているの? もうこの世界には何も残ってないんじゃない?』
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――ちが……わない……。私は……私には何が残っている……?
■ ■ ■
『もうこの世界に未練なんてないでしょ? 残っているのは
■ ■ ■
――レイラフォード……。世界……。私から
■ ■ ■
世界はどれだけ私の事が憎いのだろうか。
世界から彼を奪った私が憎いのだろうか?
それとも、彼とは関係ないにも関わらずこの仕打ちなのだろうか……?
こんな世界に価値なんてあるのだろうか……。
最後に残っていた足場を自ら壊してしまい、私の世界は完全に壊れてしまった。
私の目の前からガタガタと崩れ落ち、足元には何も残らなかった。
この世界に残されていたものは全て無くなってしまった。
唯一残っている彼の
だから、この世界には何も残っていない。
この世界が壊れてしまっても、私が彼の
――彼には悪いが、やはり私は彼を継いで並行世界を渡ることにしよう。
もう、この世界で私のやるべきことはもう何もなくなってしまった。
ただし、並行世界を渡ってやることは彼のやっていたこととは逆。
レイラフォードとルーラシードを出会わなくさせること、それが私に出来る世界に対する反抗だ。
レイラフォードやルーラシードという存在がなければ、彼は苦しむこともなく、死ぬことはなかった。
そして、本来の使命を捨て、レイラフォードに取り込まれる前に自ら死を選んだ彼の選択が正しかったことを証明したい。
そう、レイラフォードとルーラシードは結ばれるべきではないのだ。
レイラフォードという存在がいなければ世界はこんなことにならなかった。
この世界を壊す
もちろん、この世界のレイラフォードであるレイラには何の恨みもない。
レイラには非はないと彼も言っていたし、それには私も同意する。何より見たことはあっても直接会ったことはなく、全く知らない相手だ。
だけど、駄目。レイラはレイラフォードだから。
レイラフォードは殺さなきゃいけない。
それが例え見ず知らずの相手だろうと。レイラフォードであるレイラに、私の方が彼に
レイラフォードの殺し方をいくつか
レイラフォードが自らクンクンと犬のように
私はわざわざ
勝ち逃げした私を逃したままにするような腰抜けなら殺す価値すらない。追ってこれるものなら追ってくるがいい。
もう彼のいないこの世界に未練は無い。どうせなら世界が私に
そうだ、結婚式の映像を世界中に流そう。
世界中から祝福を受けながら全て壊し、私たちの
さぁ、レイラフォードという存在に