19
隣のフィアナが両手にトライデントを生成。凜々しい表情で、頭上のリグラムの腹を目がけて発射した。
トライデントは二本とも命中。だが衝突点には傷一つ付かなかった。
「無駄な足掻きよ! 瀕死とはいえ、魔竜レヴィアとの融合を果たしたのだ! 蛆虫どもの攻撃など歯牙にも掛けるはずがなかろう!」
大きな自信を滲ませた声が轟いたかと思うと、リグラムは大きく息を吸い込み、吠えた。身を竦ませるような轟音が響く。
次の瞬間、リグラムの身体の上の空間に黒炎の球が出現。大きさはリグラムとほぼ同等であり、衛星太陽と見まごうほどの存在感を放っている。
「こんな……こんなことって。こんな巨大な
フィアナが呆然と呟いた。近くではカノンも、放心したような面持ちを見せている。
その時だった。(ルミラル様! わたしたちを助けて!)ユウリの耳に、聞き慣れた女の声が飛び込んできた。
「ルカ? ルカなのか?」ユウリは思わず声に出した。
刹那、コォォォォォォウッ! 高い音がユウリの鼓膜を振るわした。ユウリは音源に顔を向けた。
声の主は、エデンと並んで飛翔する神鳥ルミラルだった。頭を捻り、リグラムに神秘的な青緑色の眼を向けている。
「何だ貴様! 取るに足らぬ劣神の分際で、我に刃向かおうとでも言うのか!」
リグラムが尊大に大喝した。
ルミラルが口を開いた。すると口腔に白光が発生。光はどんどん強さを増していき、目が眩むような輝きを見せ始めた。
(ルミラルの口に! こんなの初めて──)
ユウリが驚愕していると、ルミラルは首を大きく振った。と同時、光が解き放たれる。ユウリの身長の三倍ほどの径を有する光線が、完全なる無音でリグラムへと飛んでいく。
頭部に命中した。瞬間、暴風が一帯に吹き荒れた。ユウリの身体は浮上し、大きく吹き飛ばされ始める。
だがユウリ、翼を駆動。力強く羽ばたいて体勢を整える。
風が止んだ。ユウリはホバリングしつつリグラムを注視する。
リグラムの全身が、ルミラルの放ったのと同色の光に包まれていた。リグラムは顎を持ち上げており、苦しげな面持ちを見せつつ戦慄いている。
次の瞬間、リグラムの身体が収縮を始めた。見る見る間に縮んでいき、のっぺりした竜の姿へと戻った。