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第8話

       8


 足を狙って尻尾が飛んでくる。ユウリは跳んで回避。間髪入れずに火炎が来る。しかし、羽ばたいてさらに上方へ逃れる。

 雷槌らいついを振るった。バチッと短く音がして雷撃が発生。ジグザグ軌道で空中を進む。

 眉間に当たり、尾長悪竜ヴァルゴンはひるんだ。

 ユウリはすかさず接近。両手持ちした雷槌らいついをテイクバックし、脳天に叩き込む。

 鈍い音がした。尾長悪竜ヴァルゴンの全身に電光が駆け抜ける。ユウリは止めを刺すべく、わずかに下降。顎を目がけて雷槌らいついを振り上げる。

 刹那、尾長悪竜ヴァルゴンの頭部が後ろにのけぞった。ユウリの攻撃が空を切る。一拍遅れて尻尾が地面すれすれから迫る。

 虚を突かれた。だが強引に水盾すいじゅんを下に持っていき、尻尾にぶつけた。

 衝撃でユウリは飛ばされる。しかし直撃は逃れたためダメージは小さかった。

 尾長悪竜ヴァルゴンの背後まで至った。ユウリは力任せに翼を動かし、一気に敵の間近に到達。空中移動の勢いも乗せて雷槌らいついで背中をぶっ叩く。

 渾身の一撃が入った。尾長悪竜ヴァルゴンは小さく呻き、ぐらり。姿勢を崩して地面に倒れ伏し動かなくなった。

(よし、完勝!)ユウリはぐっと拳を握り込んだ。

(そうだ、あの女の子はどうなった?)ユウリはフィアナの駆けていった方向に目を向けた。

 へたり込む女の子の近くにフィアナが立っていた。鋭い視線をすぐ近くにいる悪竜ヴァルゴンに向けている。

 悪竜ヴァルゴンが突進してきた。フィアナ、サイドステップで小さく躱し、子ユリシスの槍を生成。コンパクトに振り抜き左目に突き入れる。

 急所への痛打により、悪竜ヴァルゴンは絶叫した。フィアナはすっと正面に入り、がら空きの喉に刺突を見舞う。

 命中の瞬間、わずかに硬直し、悪竜ヴァルゴンはぐらりと崩れ落ちていった。ズゥゥン! 巨体が音を立てて地面に倒れる。ぺたんと座りこんでいた女の子は、ぱあっと表情を明るくする。

「ありがとう、お姉ちゃん! もうほんと、あたし死ぬかと思ったよ!」

 無邪気な様に女の子は言い放った。

 フィアナは女の子に近づき、しゃがんで目線を合わせた。

「ごめんね、怖い思いをさせて。でも勇敢なのね。それに年齢の割には強い。きっと素晴らしい護人ディフェンシアになれるわ」

 フィアナは柔らかい眼差しで女の子を見つめつつ、ゆっくりと頭を撫でた。女の子は満足げに笑顔を返している。

 微笑ましい光景に小さな感動を覚えつつ、ユウリは二人に近づいていった。気づいたフィアナが小さく笑んだ。

「力が完全に戻ったのね。安心したわ」嬉しそうなフィアナに、「ああ」とユウリは短く応じた。



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