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二日後、ユウリは士官学校の校長室前にいた。背後にはフィアナ、ルカ、シャウアの姿があった。
目の前には、年季の入った木のドアがある。ユウリは円形のノブを掴み、扉を引いた。ギィと鈍い音を聞きつつ「失礼します」と畏まって告げる。
入室したユウリは数歩行って止まり、部屋を見渡した。本、本、本。壁際にびっしり並ぶ本棚の中を含めて、部屋はとにかく本だらけだった。
本棚の上は三面とも長窓で、その横の壁は透き通るような白色である。天井は高く、やわらかな朝の光とあいまって開放的な雰囲気だった。
ユウリは正面に視線を移した。机の横の椅子に、メイサが座っていた。脚を組み、片手持ちした本を読んでいる。
「おはようございます」ユウリが挨拶すると、メイサは顔を上げた。
「ユウリ、よく来たな。後ろの面々もご足労、感謝する」
メイサから鷹揚な声色で返答が来た。笑顔も柔和な様である。
その後、シャウアとメイサの間で自己紹介があった。ひとしきり話し終わり、「ではそろそろ本題に移ろうか」とメイサは後ろを向いた。
ごとりと、メイサが机に大きな石を置いた。「これが
メイサの静かな言葉を耳にし、ユウリは木箱を注視する。
正方形で、一辺がユウリの手の長さほどあった。十行ほどに渡り文字らしきものが記されている。ユウリには解読できないが、深遠な内容が書かれているような雰囲気は伝わってきた。
木箱を食い入るように見つめる四人に、メイサは面白がるような笑みを浮かべた。
「ご存じのとおり、
「危険は承知の上です。でも私は、ケイジ先生みたいな犠牲者を一人でも減らしたいんです」
フィアナが固い意志を伺わせる語調で断言した。ルカがうんうんと可愛らしく頷く。隣のシャウアから返答はないが、真剣な顔から見るに異論はない様子だ。
「僕も同意見です。みんな覚悟はできてます」ユウリはメイサを見据え、きっぱりと告げた。
「承知した。ではルカ。頼んだ」メイサがあっさりと告げるた。
「はい!」毅然とした口調で応答し、ルカが歩き始めた。木箱の手前で立ち止まり、集中した顔で両手をかざす。
やがてルカの掌が、ぼうっと青みを帯び始めた。すぐに木箱も同色の光に包まれる。
数秒後、木箱が自ずと開いた。中には何もない。だがユウリは次第に気が遠くなり、ふうっと意識を手放した。