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(初めてね。ケイジ先生が私と二人きりで会いたいだなんて仰るのは。……何だか胸騒ぎがするわね。何事も無ければ良いんだけれど……)
フィアナはかすかに不安を覚えつつ、聖都の道を行っていた。
すでに夜の帳が下りており、ほうほうと梟の鳴き声がしている。
町外れまで至り、フィアナは前方に目を向けた。緩やかな傾斜のついた地面に、丈の低い草が生えていた。フィアナは再び歩き出し、丘を登っていく。
頂上まで辿り着きなんとなく振り返る。遠くに点在する家々から微かな灯りが漏れてきており、静かな夜の風情を強く感じさせた。
背後で気配がした。フィアナは向き直った。ケイジの姿があった。
「先生! 何かあったんですか?」フィアナははっきりと問うた。
するとケイジの口角が上がった。
(? なんか不気味な笑顔──)フィアナが訝しんだ瞬間、ケイジの顔が崩れた。
「KYEEEEEE!」
耳をつんざくような奇声が響いたかと思うと、ケイジから分離した何かが飛んできた。
フィアナはとっさに身体を沈めた。だが、チッ! 右頬に掠り、鋭い痛みが生じる。
(|悪竜《ヴァルゴン》! それもユウリと会った時と同じ小型の! くっ! いったい先生に何があったっていうのよ?)
フィアナが戦慄していると、一体が真上から降下してきた。首を引いてどうにか躱す。
「
高らかに叫び、フィアナは緑青色の蝶、ユリシスの翼を出現させた。翼を構成するのは微細な子ユリシスであり、フィアナの力は入れ子構造を為していた。
すぐさまフィアナは精神統一した。すると子ユリシスの間で、白色の球体が行き来し始めた。
前方から四体の
四体は瞬時に縦一列になった。前の三体は
(味方と連携して全滅を免れて──。こいつら、見かけ以上に知能が高い!)
焦燥を深めるフィアナにかまわず、小型
フィアナは翼から子ユリシスを分離した。槍の形を作り、右手に握り込む。
ざくり。肉を貫く感触があった。腹を刺された
フィアナはすばやく前を向いた。何十体もの小型