新体制となったステラノヴァ。
俺はヒナユイ、ひより、ひかりの新しいステラノヴァのマネジャーとなった。
門真さんと同じような立場になったと言えばそうなる。
そしてその門真さんは、お腹の大きくなった莉子を支えるため、しばらく会社には来ないと言っていた。
ただ新米マネジャーである俺や一晴が心配だと言っていたので、リモートワークで参加するという。
さて、そんな環境が変化した俺だが、もう一つ変化があった。
颯真が残した不思議な手帳の予測通りに、美玲と結婚し、新居に引っ越すという現実がまだ信じられなかった。
俺がこんな幸せを手に入れるなんて、まるで夢みたいだ。
かつては、自分の時間さえも無駄にしていた俺が、今では美玲や仲間たちのために全力を尽くしている。
あの頃の俺からは想像もできない変化だ。しかし、それと同時に、これからの未来に対する不安も拭いきれない。
だが、守るべきものができた今、俺はもう後戻りできないのだ。
「直哉、この時計と手帳、どうする?」
新居に引っ越すための荷造りの最中、美玲が動かなくなった懐中時計と不思議な手帳を手にして言う。
「それ、俺たちが結ばれた証だし、取っといてくれる?」
「……そうね」
そうして荷造りを進めていき、新居に到着した時に、荷解きをしていると、入れておいたはずの懐中時計と不思議な手帳が忽然と姿を消していたのだ。
「ちゃんとこの中に入れたはずなのに……」
「……確かにちゃんと入っていた、っていうスペースはあったのにな」
時計も手帳も、俺にとってただの道具ではなかった。
あれがなければ、美玲と結ばれることも、ここまで来ることもできなかっただろう。
だが今、役目を終えたかのように静かに姿を消した。
それは、新たな試練の始まりを示しているのだろうか――そんな不安が胸の片隅に残った。
「少し寂しいね」
「そうだな」
新居に住み始めてしばらくして、美玲が体調を崩すことが増えた。
体調不良の思い当たる節がありすぎるので、妊娠検査薬を買いに行って、美玲に使わせてみたところ――。
「……あぁ、なんだ。それが理由だったんだ」
「どういうことだ、美玲?」
俺の問いに、美玲は少し涙ぐみながらも、嬉しそうに笑った。
その表情には、驚きと喜び、そして少しの不安が混じっていた。
「私……直哉、あなたとの子供を……」
言葉が詰まる美玲を見て、俺も一瞬、言葉を失った。
胸が熱くなり、心臓が大きく鼓動を打つ。
「……そうか、俺たちの子供ができたんだな」
「私も莉子みたいになったのね……」
美玲は小さく笑いながら、肩をすくめた。
「ずっと、子供を授かることに不安もあったの。でも、今はただ、嬉しい……」
「これからは美玲に宿った新しい命とともに歩いていくんだな」
「ええ。そうなるわ。これからもよろしくね、直哉」
彼女の言葉を聞き、俺はしっかりと彼女の手を握った。
たくさんのことが変わり、たくさんの困難を乗り越えてきた俺たち。
懐中時計や手帳は消えてしまったけれど、それはもう必要ないものになったからだ。
俺たちはもう過去に頼ることなく、自分たちの力で未来を切り拓いていける。
「きっと幸せな未来が待っているさ」
過去の出来事は大切な思い出として心に残り続けるが、今は、これから始まる新しい物語が待っている。
俺たちの未来は、この手で創り上げていくものだ。
どんな困難が待っていても、今なら乗り越えられると信じられる。
振り返ることなく、ただ前を向いて――。
新しいステラノヴァと共に、俺たちの新しい日々が始まる。
ヒナユイ、ひより、ひかりもまた、それぞれの新たな挑戦に向かい、輝きを増している。
彼女たちと共に歩む日々がこれからの俺にどんな未来をもたらすのか、楽しみだった。