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第20話

 文化祭二日目。

 ステラノヴァのステージがあんな事になってしまったので、二日目の今日に仕切り直しとなる。

 昨日のステージでのトラブルの張本人である三島瞬に対し、学園は一週間の出席停止処分を言い渡した。

 彼の無謀な行動が文化祭を混乱に陥れたが、それでも周囲に彼の悪行を咎める者はいなかった。

 彼がこれほど堕ちるとは、誰も予想していなかったのだ。

 これにより評価も下がったので、大学への現役合格は難しいことになるだろう。

 神崎に対しては生徒会副会長を降ろされてしまい、文化祭終了までの出席停止処分となった。

 副会長のイスが空席となってしまったことにより、鹿伏兎先生や美玲の推薦もあり、暫定的に俺が副会長を兼任することに。

 副会長が俺になったので倉掛さんは監査の座を降りることができるようになったが、生徒会を気に入ったらしく、任期満了までいることになった。

 仕切り直しとなったステラノヴァのステージは大盛況のまま終わり、秘密を打ち明けた美玲になお一層の支持が集まることになり、生徒会は盤石の体制を取ることができるようになったのだ。

 全体的に見れば、今年の九重葛学園の文化祭は大成功のうちに幕を下ろしたのだ。


 ☆★☆★☆★


 夕焼けが九重葛学園を照らし、文化祭の喧騒がようやく静まった。

 俺は校庭の片隅で、残された紙くずや倒れた看板を片付けていると、颯真と門真さんが時を止めて俺を呼んだ。


「よくやった、直哉」

「ここまでの結果を残すとは、さすがは私が見込んだ男……。これで本当に救世主になってしまったか……」


 二人が称賛の言葉を俺に投げかける。


「このような結果は想定外だった」

「まさか、美玲が自ら秘密を打ち明け、カレンやリーコに三島たちを問い詰めさせて退場させるとは……!」

「ここまでの状況は予測できなかったのだな、颯真?」

「ええ。門真さんの仰るとおりです。まさかこのような結末になるとは思っても見なかったのです」


 颯真が言う。


「……これで、私はようやくこの世界から消えることができます。

 嬉しいような……寂しいような……不思議な感覚だ……。桐生直哉、ありがとう。君がいなければ、私は……」


 足元から粒子となって消えていく颯真。


「そ、颯真!?」

「いいんだよ……。これが私の運命なんだ……。私は幸せな結末には至れなかったけれど……。

 それでも……。君と過ごした時間は……本当に大切だったよ、直哉……。ありがとう……」


 そして、颯真は満面の笑みを浮かべながら消えていった。


「……暁颯真はしたのだな……」

「門真さん……」

「だが、俺は特異点である君と美玲の運命を、最後の瞬間まで見届けるつもりだ。

 君の未来がどんなものになるか、誰よりも興味があるからな……」

「となると……?」

「もちろん、俺が死ぬまでだ。さて、グランドフィナーレまであと少しだ。気を抜くなよ、桐生直哉」


 気がつくと、時は動き出していて、門真さんの姿はどこにもなかった。

 このゲーム世界にありえない結末を用意させた特異点の俺。

 門真さんの言うグランドフィナーレは、順当に行けば数年後の俺と美玲が幸せな未来に向かって希望を持って終わる……はずだが。

 予定された結末を改変してしまった俺が選んだこの道が、どんな結末をもたらすのかはまだ分からない。

 でも、この世界で手に入れた大切なものを、俺は絶対に失いたくない――どんな未来が待っているにしても。


「直哉」


 呼ばれた方向に振り向くと、美玲がそこにいた。カレンやリーコと共に。


「かっこよかったよ、ラビタス。……いや、桐生直哉君。

 君は本当に、アタシたちを守るために戦ってくれたんだね。ありがとう……心から感謝してるわ」

「ええ。やはり貴方はミリィの騎士ナイト……いえ、高級騎士パラディンでしたわ、桐生直哉様」


 美玲が俺の真名を教えたのか、カレンとリーコが言う。


「これからもミリィを支えてあげて。アタシ、信じてるからね、ナオ君のこと!」

「私もですわ。ミリィには貴方様が必要ですわ」

「カレンさん……リーコさん……。ええ、もちろんです」


 決意を新たにするように俺は二人に言った。

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