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第4話

 初めに投稿したのは、こんな話だった。有名な『一杯のかけそば』をベースに、藤堂さんが暴力団の組長で、母親は藤堂さんから麻薬を買っていたから貧乏だったという内容だ。

 我ながらひどい話だと思う。こんな話を書いて見せれば、普通はブロックされてしまうだろう。しかし、藤堂さんの反応は好意的だった。


「面白いですね!一杯のかけそばは感動ストーリーですが、反社会的要素をひと匙入れるだけで一気に不穏になり雰囲気が引き締まる。才能ありますよ」


 他のフォロワーたちも面白いと褒めてくれた。私は予想外の反応に驚いたが、すっかり有頂天になってしまった。

 そうか、私には文才があるのか。面白い物語を作れる才能があるのか。その喜びは、会社ですっかり自信を失ってしまった私の心に火を灯した。そうだ、私は何もできない人間ではない。埋めるのだ、この虚無を。物語を書くことで。

 私は暴力団組長としての藤堂さんや、藤堂組の設定を詳細に固めて、次々に藤堂組長が悪行の限りを尽くす小説を書いていった。



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