「暴力団に脅迫を受けて困っている…というお話ですか?」
私が話し出すと、霊能相談所の所長を務める男は困惑の表情を浮かべた。それはそうだろう。話の切り出し方が悪かった。暴力団被害であれば、霊能相談所ではなく警察に行くべきだと思うのは当然だ。
「いえ…違うんです。暴力団から被害を受けているというのは間違いありません。夜中にドアを叩かれたり、暴言が聞こえたり…けれど、おかしいんですよ。奴らは…存在しない暴力団のはずなんです」
「落ち着いて。落ち着いてください。貴方がなぜそう思ったのか、初めから順序立てて教えてください」
所長は私を宥めるように言った。私はおかげでいくらかの冷静さを取り戻すと、事の発端に意識を戻した。
そうだ、いったい何故こんなことになったのか…