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調整師の幸運術~すべてを奪われた令嬢は運を操る
兎緑夕季
異世界ファンタジーダークファンタジー
2024年09月14日
公開日
33,748文字
連載中
所有者に幸運をもたらす聖装飾物なる品が存在するラクメイナ帝国。古代の頃に作られたとされる聖装飾物をたった一つでも手に出来れば、富を得て、愛に恵まれ、時に権力を、または英雄として名を残すと語られる。そのため、人々は大金を積み、それらをかき集めようと躍起になる。そんな人々のニーズに応えて、聖装飾物の鑑定、売買を行うのが調整師である。しかし、それは表の姿。運とは簡単にバランスを崩し人々に害を成す事もあるとは知られていない。故にその乱れた運をあるべき姿に戻し、また運にまつわる怪事件を闇に紛れて、解決するのも調整師の役目である。

そんな世界に生きる調整師シア・シエリー。彼女はかつて子爵家の令嬢として、領地で家族と共に慎ましく生きていた。多少の不満はあっても幸せな日々。だが、突然の悲劇によってすべてはあっけなく崩れ去る。死の境を彷徨うほどの不幸を経験した彼女は運を操る力を手に入れ、生還する。その力で最初にやるのは復讐か、それとも人助けか?
これは一人の少女が調整師になるまでの過程を経て、師匠ヴァノン・メイディーと共に様々な運にまつわる事象に関わっていく物語。果たして、二人が行き着く先は幸運か不運か…。

プロローグ

同じだけの頭脳、容姿、似た環境で育った人間がいるとしましょう。

そして二人とも夢を持っている。

それは例えば、ヴァイオリニストになりたいとか科学者になって世界をよくしたいとか、画家として大成したいとか夢はなんでも構いません。


または、今よりもいい暮らしを送りたい。

出会いが欲しい願う場合もあるのでしょう。


では、それらを叶えるのに必要な物のは?


ここで大事なのは両者ともその夢を実現できるのかという事…。

人生は残酷なもので、片方は夢を叶え、もう一人は挫折し、新しい道も見いだせないという未来も存在するかもしれません。

そうなった時、両者の間の違いは何なのでしょう?


タイミング?

チャンス?


呼び方を変えようとも人はこう語ります。


運も実力の内なのだと…。


じゃあ、運とは何を指し示すのでしょうか?


それは目に見えない何かなのか?


多くの者が欲する力だけれど、つかめる者とつかめない者がいるのが事実。


ではもし、その力を操れたら?

その者は喜ぶのでしょうか?

嬉しいのでしょうか?

必ず幸せな人生を送るのでしょうか?


運とはよくも悪くも平等に訪れるとも言う。

その真偽は?


これは運にまつわる話。

運が確かに存在する世界で生きる者達の日常。

されど必ずしもハッピーエンドから始まるわけではない。


運を操る者。運を下げる者。

運を作る者。運に翻弄される者。

運を視る者。運を金に変える者。


それらの当事者になり、運にまつわる品物と関わるのが調整師。

文字通り運を調整する者達。

運とは不運だけでも幸運に偏ってもならない。

運が込められた聖装飾物を回収、売買、調整して世界のバランスを保つ。

それが調整師の信条。


だが、仕事内容を本当に理解している人間は少ない。

特に古き物が追いやられつつある激動の時代においては…。


そして、何も知らなかった少女がいる。

運という見えない世界を知る事なく、この先も何も気づかず生を全うするはずだった者。

しかし、彼女は足を踏み入れる羽目になる。

運にまつわる力を手にし、調整師として歩かなければならなくなった。


これは彼女がすべてを失うお話。そして、調整師として世界と関わっていく成長の記録。

それは幸運か不運か?

確かめてみましょう。





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