「……し、んじられない」
目を覚ましてしばらくたってからも、ジークは宛がわれた部屋のベッドに横たわったまま、両手で顔を覆って呼気を震わせていた。
その顔は、耳と言わず首まで赤い。
いまだ身体の奥に蟠ったままの
自分の意志とは反した衝動もそうだし、ずっともやが掛かったようだった頭の中もすっかりクリアになっている。どこに触れても過敏に粟立つようだった肌の感覚も、ちゃんと平素の――どちらかと言えば鈍感な――それに戻っていた。
今回は記憶もちゃんと残っている。残っているどころか、薬のせいか妙に鮮明にこびりついていた。少しでもそのことを思い出そうとすれば、すぐにでもその光景が蘇ってくる。最中に囁かれたアンリの言葉も、その声も――ともすれば、その時の感覚も。
「あんな……あんなこと――」
忘れたいと思うのに、ジークは何度もそれを再生してしまう。
ジークだって成人男子だ。性欲は人並みにある。
けれども、それはあくまでも人並みで、もっと言えば突っ込む方で、まさか自分がそんな自体に陥るなんて考えたこともなかった。
とは言え、実際〝出す〟だけではまるで解消には至らなくて――。
どうしたら……と訊ねたジークに、アンリはふっと表情を和らげた。
その瞬間、アンリに対する印象が変わった。基本無表情か、どちらかと言えば冷淡に見えていた男が、不意打ちのように微笑んだのだ。「大丈夫」と優しく言われた気がして、ジークもそれを境に少しだけ意識を改めた。気を許してしまった。結果、あくまでも治療との認識の上、身を委ねてしまったのだ。
それが間違いだった。
* * *
満足じゃない場合はどうしたら――。
そう口にしたジークに、アンリはふっと表情を和らげた。
「黙って私に従えばいい」
笑顔に反して、高圧的ともとれる言葉に、ジークは思わず閉口する。
釣られて浮かべた笑みが凍り付き、辛うじて絞り出したのは「え……?」という掠れた声だけだった。
それを聞いてか聞かずか、アンリは僅かに目を細め、そのままジークの両脚を抱え上げようとする。
「っ?! え、待っ……!」
ジークはとっさにアンリの腕を掴んだ。ふるふると首を振り、「なに、を……」と声にならない声を漏らした。
「これは治療だと言わなかったか」
暗に大人しくしろと脅されたような気分になり――そのくせ火照ったままの身体が疼いて、ジークは何も言えなくなる。
その様子にアンリは面倒臭そうに吐息して、それならとばかりにジークの身体をひっくり返した。
そうして、されるままに俯せになったジークは、次には腰を引き上げられて――。
(こ、こんな格好……っ)
羞恥に身が竦み、眼前にあったクッションに顔を押し付ける。
逃げたい。
消えたい。
もう
心底思うのに、まるで催眠術にでもかかったかのようにアンリの言葉に逆らえない。
それどころか、さらされた谷あいはいまだてらてらと濡れ光っていて、奥底に熱を灯したままの腰は誘うように揺れてしまう。出したばかりだと言うのに一向に萎えない屹立も、座面に擦れるだけで再びとろとろと蜜をこぼしていた。
「あ……!」
待っていたように、アンリのそれが狭間を滑る。あてがわれた先端に滲んでいた体液と、ジークが纏うそれが混ざり合い、泡立つような水音が聞こえ始める。
狙いを定めたいのか定めたくないのか、焦らすように表層を撫でては離れるその動きに、知らず強請るような吐息が漏れた。