「あ、あの……っすみませ……」
ただそこに立っているだけで、触れてもいないのに張り詰めていくそれを知られるのが恥ずかしい。
なのにジークは、一歩たりともそこから退くことが出来ない。
依然として足元はおぼつかないし、どころか、いっそう腰が抜けたみたいに身体に力が入らなくなっている。アンリの支えがなければ、とっくに床へと崩れ落ちていただろう。
そのくせ、身の内を焦がすような熱に煽られるまま、唇は戦慄き、腰は勝手に揺らめいてしまうのだ。
「あ、な……何で……っ」
窮屈に抑え込まれたままの下腹部が、布地に擦れるだけで弾けそうになる。
堪え難い羞恥と混乱に、顔は火照り、目の際からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
「ぃ……っ、ぁ、――!」
刹那、間近のアンリの肩口に顔を押し付けるようにして、身体を震わせてしまう。
服の中で、先端から熱い
「あ……、……す、すみ、ません……」
遣る瀬なすぎて、すぐには顔を上げられない。
どうして急にこんなふうになってしまったのか……。分からないまま、記憶の奥底でふわりと澱が舞う。
(あ……これ、昨日と……似て……?)
ふわふわとした余韻の中で、不意にリュシーとの会話を思い出す。
自分がここに来た経緯。森の中に踏み入ったとたん、その身に起こった理解しがたい感覚と変化――。
思い返すと、頭の芯がジンと痺れる。
確かにここまではよく似ている。
このまま飲まれてしまえば、それこそ同じ状況になるのだろう。昼間、リュシーの前で倒れたときと同様に。
突然身体が発情し、それを全く
そしてそうなった場合、ジークにその時の記憶は残らない。
だが、それはあくまでもジークが正気を失った時の話で、今回はそこまでには至っていない。
少なくとも現時点でのジークにはまだ思考力が残っているし、流されそうになったとは言え理性も繋ぎ止められている。羞恥心だって持ち合わせたままだし、何よりその湧き上がるような欲求に抗おうと必死だ。
けれども、その
だから当然答えは出ないし、そのおかけで余計もやもやとしたものを抱えたまま、なおも燻り続ける熱を持て余すしかない。
例の香りは、一度達したくらいではほとんど変化することもなく、それどころか、次にはそれを上回る効果を持って、ジーク自身をもいっそう昂ぶらせていく。
「は……っぁ、なん、でっ……」
呼吸が乱れて、意識が霞む。ともすれば
それを必死に振り払うよう、ジークはふるりと頭を振った。
「薬は効いているようだな」
そこに囁くような声が落ちてくる。耳元に吐息が掠め、それだけでびくりと肩が跳ねた。
* * *
二人分の重みを受け止め、カウチの座面が大きく沈む。
身動げば微かにスプリングの軋む音がして、たゆたうみたいに身体が揺れた。
「く……薬って……なん、ですか」
ジークの甘く掠れた声が、部屋の空気を震わせる。
浅く忙しない呼吸音が、それをますます艶かしいものへと印象づける。
吐息はすっかり熱を帯びていて、額にはじっとりと汗まで浮かんでいた。
「さっき飲んだだろう。……リュシーが飲ませたあれだ」
「リュシー……さんが、飲ませた……?」
「鎮静剤のようなものだ」
アンリは淡々と答えながら、組み敷いたジークの衣服を
遅れてそれに気付いたジークが、「あの……」と声を発するが、まるでわかっていたように「診察だ」と遮られてしまった。
(診察……)
そう言われると拒否できない。
自分の状態を思うとひどく恥ずかしくもあったけれど、元々
サシャの指示によると、