(ぜ、絶対おかしい……)
手繰り寄せた理性を握り締め、頭の片隅で呆然とする。
だってさすがにこんな……こんな触られただけでイくなんて、これじゃさっきの黒髪みたいじゃねぇか!
「今日はやけに早いですね……そんなにさっきの子が美味しかったんですか?」
ラファエルが濡れた指に舌を這わせながら、僅かに目を細める。
顔にはいつも通りの微笑みが貼り付いているのに、その声音はどこか不機嫌そうな色を孕んでいるようにも聞こえた。
「べ、別にお前には、関係……」
「関係なくはないですよ」
「あ、も、さわ、んな……っ」
ラファエルのその手が、まっすぐ俺の下腹部へと伸びる。
爆ぜたばかりだと言うのに、俺の熱は既に兆しかけている。吐精してからは触れられてもいないのに、不規則にぴくんと震えながら、勝手に硬度を増していく。
けれども、ラファエルはそれには目もくれず、鼠径部から会陰へと焦らすように指を這わせ、更に奥へと谷間を辿っていった。
「っ、や、やめっ……!」
俺の言葉を無視して、触れて欲しいところには触れてはくれず、触れられたくないところには触れようとするラファエルの長い指。
頭上に置かれている俺の手はもう自由になっているのに、嘘みたいに力が入らない。
こんな状態、絶対おかしい。自分が自分でないみたいな錯覚がする。
ラファエルの指が探り当てた窪みをつつく。ゆるゆると表面を撫でられ、擦られ、不意打ちのように躙られる。
「ぃっ――ちょ、やめろ、ばっ……、ああっ!」
ぐち、と音を立てて差し込まれた指が、ほどなくして二本に増やされる。
反射的に痛みを覚悟して目を閉じたけれど、不思議とそこから伝わってくるものに苦痛は感じなかった。
いつもどおりの違和感と圧迫感がなくはない。けれども、それをあっさりと上回る――。
――愉悦の波。
「あっ、な、待っ……、これ……ひぁっ!」
内側から、挟むようにして押し上げられたそこから、びり、と甘すぎる痺れが背筋を駆け抜ける。
腰の奥へと蟠っていた熱が競り上がり、ぴゅる、と少量の
「今日は……なんだか分かりやすいですね」
「っ! あぁっ、な、なに、がっ……!」
「……ほんと、なんなんですか」
呟くように言ったラファエルが、僅かに視線を下向ける。その表情を隠すように、長い白金髪の髪が肩からこぼれ落ちてきた。
髪の毛に覆われる直前、ラファエルの笑みが一瞬消えた――ような気がした。
「分かってるんですか」
「だ、だから、なに……が……っ!」
返る言葉はないままに、ラファエルはずるりと指を抜く。
かと思うと、当たり前みたいに片足を抱え上げられ、充溢した先端がそこにあてがわれた。
「――あなたは僕の恋人なんですよ」
「そ、れはお前が勝手に……っや、あっ――ああぁっ!」
言葉も半ばに一気に貫かれ、普段なら考えられないような高い嬌声が口をついた。と同時に、押し出されるみたいに腹部に白い雫がぱたぱたと落ちた。
(だから……俺、マジ早すぎ……)
穴があったら入りたい……。
……挿れられるんじゃなくて。
「…………は」
そんな俺を他所に、ただ邪魔そうに髪を掻き上げ、再び
遅れて、はぁ、という妙に
そういう状況なのだから、別に不自然ではないのかもしれない。
けれども、その反応も、表情も眼差しも、やはり急にスイッチが入ったように、やけにギラついたものに変わっている気がした。
「ラ……ラファ、エル?」
「ギル……あなた」
窺うように名を呼べば、返されたのは、いつにもまして腰の奥へと響くような官能的な声。
急くように服の下へと滑り込んできた片手が、ツンと布地を押し上げていた胸の突起を責めるみたいに捻り上げた。
「っあ!」
びくりと身を竦ませると、相乗して内壁がきゅんと締まる。その瞬間、ラファエルがとっさに息を詰めたのが分かった。
一拍後、身体の奥でどくんと脈打ったそれに、勢いよく注ぎ込まれたものを感じて――。
「え、嘘……」
……まさか、イった? マジで?
いつもはあれだけ完璧(?)に
最初は疑いながらも、やはり間違いないと知れば、思わず口端が微かに引き上がった。
かと言って、
「あなた……いったい何を口にしたんです」
独りごちるように言いながら、恨めしげに見下ろしてくるラファエルの面持ちを目にすると、少しだけすっとしたような気分になれた。
――まぁ、当然のようにこれで終わりじゃなかったけどな…………。
END