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あてられたのは04

「……っ」


 ジークの瞳に色が戻る。酩酊していた意識が、急速に輪郭を取り戻していく。

 リュシーに飲まされた薬の効果だろうか。その瞬間、先ほどまでの様相が嘘みたいに、ジークははっと我に返った。


「――え……っな、何……!?」


 自分の置かれている状況を、遅ればせながらに――意味は分からないながらも――把握して、ジークは慌てて身を捩る。頭を過ったのは、寮の自室で、ルームメイトに組み敷かれた時のことだった。


「えっ、あァ!? ――なんだよ、お前……っはァ?!」


 今にも押し入れようとしていたところを寸でのところでかわされて、ギルベルトがあからさまな声を上げる。

 苛立ちもあらわに見下ろすと、ジークは半ば恐慌状態のまま、シーツの上を必死に這い逃げようとしていた。ギルベルトはその足首を「逃がすかよ」とすぐさま掴み上げた。


「さっきまであんだけ誘っといて、今更やめるとかねぇから!」


 ギルベルトは力任せにジークの身体を引き摺り戻し、次にはその身を仰向けにひっくり返す。かと思うと、ジークの下半身を胸に付くほど折り曲げさせて、あっと言う間にその体勢で固定した。


「な、何で……っ?!」


 信じられない。

 信じられない。

 いったい何が起こってるんだ。


「まっ……待って、離……!」


 ジークは思わず胸をあえがせた。気がつくと、下肢に衣服をわだかまらせたまま、必要最低限にだけ露出させられたその場所を見せつけるみたいな格好になっている。


「ひぁっ、待……っ、や、やめ……!」


 さらされたあられもない場所に、刺さるような視線を感じる。あまりの羞恥に喉が引き攣り、ジークはまともな言葉が紡げない。

 せめてもと力一杯、身体をばたつかせようとするものの、それすらギルベルトは巧みに抑え込み、


「お前の事情なんか知るかよ! いいから黙ってヤられてろ!」


 急な様子の変化に違和感を覚えつつも、次にはさっさと自身に手を添えて、ジークのそこへと切っ先を擦りつける。

 そのまま上から垂直に突き立てるように腰を落として、先端を泥濘ぬかるみへと埋め込んでいく。


「いっ……! っあ、嘘……っ」


 ジークの歯の根が寒いように震える。上擦った悲鳴が室内へやに響く。


 ギルベルトは息を詰め、更に奥へと進もうとする。一切慣らしていないのに、発情のせいか入口は意外に柔らかい。それでもぬめりの割に中は狭く、それ以上の侵入は容易ではなさそうだった。

 ……が、かえってそれがいとギルベルトは不遜な笑みを浮かべる。


「待、……ぃあっ――や、嫌だ……!」


 ジークがギルベルトの腕を掴む。爪を立てられ、傷が出来る。それでもギルベルトは一向に力を緩めない。緩めないどころか、


(こういうのを、強引に引き裂くのも嫌いじゃねぇんだよな――)


 ギルベルトは半ば恍惚と目を細め、口端を更に引き上げた。


 けれども、次の瞬間、


「――っ!」


 バァン! と大きな音がして、半端に開いたままだった窓が枠から外れ、部屋の中へと弾け飛んできた。


「は――はぁ?!」


 さすがに動きを止めてそちらに目を遣ると、破損した窓はギルベルトが忍び込んできた箇所で、


「本当に……ここまでばかだとは思いませんでした」


 次いでその枠を潜って現れたのは、まぶしいほどに真っ白なローブを身に纏った、白金髪の――。


「……ラ、ファエル……」


 ギルベルトが呟いた男に違いなかった。


 ラファエルは、さらさらと流れる癖のない長髪を掻き上げながら、あからさまに呆れた表情でため息をついた。


「まったく、僕にこんなところから入らせるなんて……」

「おっ……お前が勝手に入ってきたんだろ?!」


 ギルベルトは先端を半端に埋めたまま、信じられないとばかりに声を荒げる。伝わってくる振動に、ジークの喉がひくりと鳴った。


「悠長に玄関回っていたら、あなたそのお粗末なものを完全に突っ込んでいたでしょう」

「そっ……だ、誰のなにがお粗末だ!」

「っい、あ……!」


 言うなり、ギルベルトは見せつけるように強引に腰を落とそうとした。その動きに、ジークの口から悲鳴じみた声が上がる。

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