「……っ」
ジークの瞳に色が戻る。酩酊していた意識が、急速に輪郭を取り戻していく。
リュシーに飲まされた薬の効果だろうか。その瞬間、先ほどまでの様相が嘘みたいに、ジークははっと我に返った。
「――え……っな、何……!?」
自分の置かれている状況を、遅ればせながらに――意味は分からないながらも――把握して、ジークは慌てて身を捩る。頭を過ったのは、寮の自室で、ルームメイトに組み敷かれた時のことだった。
「えっ、あァ!? ――なんだよ、お前……っはァ?!」
今にも押し入れようとしていたところを寸でのところで
苛立ちもあらわに見下ろすと、ジークは半ば恐慌状態のまま、シーツの上を必死に這い逃げようとしていた。ギルベルトはその足首を「逃がすかよ」とすぐさま掴み上げた。
「さっきまであんだけ誘っといて、今更やめるとかねぇから!」
ギルベルトは力任せにジークの身体を引き摺り戻し、次にはその身を仰向けにひっくり返す。かと思うと、ジークの下半身を胸に付くほど折り曲げさせて、あっと言う間にその体勢で固定した。
「な、何で……っ?!」
信じられない。
信じられない。
いったい何が起こってるんだ。
「まっ……待って、離……!」
ジークは思わず胸をあえがせた。気がつくと、下肢に衣服を
「ひぁっ、待……っ、や、やめ……!」
さらされたあられもない場所に、刺さるような視線を感じる。あまりの羞恥に喉が引き攣り、ジークはまともな言葉が紡げない。
せめてもと力一杯、身体をばたつかせようとするものの、それすらギルベルトは巧みに抑え込み、
「お前の事情なんか知るかよ! いいから黙ってヤられてろ!」
急な様子の変化に違和感を覚えつつも、次にはさっさと自身に手を添えて、ジークのそこへと切っ先を擦りつける。
そのまま上から垂直に突き立てるように腰を落として、先端を
「いっ……! っあ、嘘……っ」
ジークの歯の根が寒いように震える。上擦った悲鳴が
ギルベルトは息を詰め、更に奥へと進もうとする。一切慣らしていないのに、発情のせいか入口は意外に柔らかい。それでも
……が、かえってそれが
「待、……ぃあっ――や、嫌だ……!」
ジークがギルベルトの腕を掴む。爪を立てられ、傷が出来る。それでもギルベルトは一向に力を緩めない。緩めないどころか、
(こういうのを、強引に引き裂くのも嫌いじゃねぇんだよな――)
ギルベルトは半ば恍惚と目を細め、口端を更に引き上げた。
けれども、次の瞬間、
「――っ!」
バァン! と大きな音がして、半端に開いたままだった窓が枠から外れ、部屋の中へと弾け飛んできた。
「は――はぁ?!」
さすがに動きを止めてそちらに目を遣ると、破損した窓はギルベルトが忍び込んできた箇所で、
「本当に……ここまでばかだとは思いませんでした」
次いでその枠を潜って現れたのは、まぶしいほどに真っ白なローブを身に纏った、白金髪の――。
「……ラ、ファエル……」
ギルベルトが呟いた男に違いなかった。
ラファエルは、さらさらと流れる癖のない長髪を掻き上げながら、あからさまに呆れた表情でため息をついた。
「まったく、僕にこんなところから入らせるなんて……」
「おっ……お前が勝手に入ってきたんだろ?!」
ギルベルトは先端を半端に埋めたまま、信じられないとばかりに声を荒げる。伝わってくる振動に、ジークの喉がひくりと鳴った。
「悠長に玄関回っていたら、あなたそのお粗末なものを完全に突っ込んでいたでしょう」
「そっ……だ、誰のなにがお粗末だ!」
「っい、あ……!」
言うなり、ギルベルトは見せつけるように強引に腰を落とそうとした。その動きに、ジークの口から悲鳴じみた声が上がる。