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黒魔術に走れ!
星野☆明美
文芸・その他ショートショート
2024年09月14日
公開日
855文字
完結
俺は何をやってもうまくいかない。

黒魔術に走れ!

「俺、何をやってもうまく行かないんだ」

「そうかい?そんな風には見えないんだがなぁ」

「なんで?」

「いつも要領よく切り抜けてるじゃないか。一部の女子からチャラ男扱いされてるぞ」

「なんだって!くそう!」

俺は地団駄を踏んだ。思うように行かないんだ。歯痒くてたまらない。

こうなったら。

「どこ行くんだ?」

「図書館」

「読書か?」

「ちがわい!黒魔術の本借りてくる!」

「くろま…」

そいつはゲラゲラ笑った。

「お前とは絶交だ!」

言い捨てて図書館へ向かった。


「すいません、あいにくうちの図書館には黒魔術の専門書は置いてないんです」

いきなり挫折かよ?

「代わりに白魔術、錬金術などならありますが?」

どーいう選択だろう?ま、人のことは言えんが。

「こうまじゅつは?」

「子馬術?」

「降魔術!」

「ええと、書庫にありそうですね」

司書のお姉さんがパソコンの画面見ながら言った。

「ただし、保存状態が良くなくて、一度開いたら粉々になるかもしれません」

「なんでそんなのしかないの?」

「すみません」

俺は髪をぼりぼりかいて、すごすごと図書館を後にした。


ぴかー!

公園でなんか光った。

そっちの方へ行ってみると、黒装束の数人が魔方陣を描いてなんか呼び出している最中だった。

生贄に黒猫を縛って転がしている。

俺はとっさに黒猫を助けに魔方陣の上に飛び込んだ。

「いでよ!サタン」

ほぼ同時に黒装束が叫んだ。

甲高い女声が響き渡る。

黒い牛みたいな悪魔が現れた。ただし、俺に降臨してだ。

俺だけにその姿が見えた。黒装束たちは別の場所へ跳ばされた。

にゃーん。

「よしよし。かわいそうに。もう自由だからな」

黒猫を解き放つ。とっとっと逃げてゆく黒猫。

「なんだっけ?俺、どうしたんだっけ?」

事態を好転したかったんだろう?

そうそう。なんで知ってんの?

毎日、精一杯生きていたら必ず好転する。

本当か?

武士に二言はない。

武士か?お前、武士じゃなくて牛だろ?

失礼な!あんたなんかぷん、だ!

女か?

おかまだ。

「どしえー」

俺は泡吹いてその場に倒れた。


なんか変な目にあったが、それから俺は精一杯毎日を生きている。

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