「俺、何をやってもうまく行かないんだ」
「そうかい?そんな風には見えないんだがなぁ」
「なんで?」
「いつも要領よく切り抜けてるじゃないか。一部の女子からチャラ男扱いされてるぞ」
「なんだって!くそう!」
俺は地団駄を踏んだ。思うように行かないんだ。歯痒くてたまらない。
こうなったら。
「どこ行くんだ?」
「図書館」
「読書か?」
「ちがわい!黒魔術の本借りてくる!」
「くろま…」
そいつはゲラゲラ笑った。
「お前とは絶交だ!」
言い捨てて図書館へ向かった。
「すいません、あいにくうちの図書館には黒魔術の専門書は置いてないんです」
いきなり挫折かよ?
「代わりに白魔術、錬金術などならありますが?」
どーいう選択だろう?ま、人のことは言えんが。
「こうまじゅつは?」
「子馬術?」
「降魔術!」
「ええと、書庫にありそうですね」
司書のお姉さんがパソコンの画面見ながら言った。
「ただし、保存状態が良くなくて、一度開いたら粉々になるかもしれません」
「なんでそんなのしかないの?」
「すみません」
俺は髪をぼりぼりかいて、すごすごと図書館を後にした。
ぴかー!
公園でなんか光った。
そっちの方へ行ってみると、黒装束の数人が魔方陣を描いてなんか呼び出している最中だった。
生贄に黒猫を縛って転がしている。
俺はとっさに黒猫を助けに魔方陣の上に飛び込んだ。
「いでよ!サタン」
ほぼ同時に黒装束が叫んだ。
甲高い女声が響き渡る。
黒い牛みたいな悪魔が現れた。ただし、俺に降臨してだ。
俺だけにその姿が見えた。黒装束たちは別の場所へ跳ばされた。
にゃーん。
「よしよし。かわいそうに。もう自由だからな」
黒猫を解き放つ。とっとっと逃げてゆく黒猫。
「なんだっけ?俺、どうしたんだっけ?」
事態を好転したかったんだろう?
そうそう。なんで知ってんの?
毎日、精一杯生きていたら必ず好転する。
本当か?
武士に二言はない。
武士か?お前、武士じゃなくて牛だろ?
失礼な!あんたなんかぷん、だ!
女か?
おかまだ。
「どしえー」
俺は泡吹いてその場に倒れた。
なんか変な目にあったが、それから俺は精一杯毎日を生きている。