小説家の原稿を取りに、雲雀丘花屋敷駅で降りた。
駅を出ると、すぐ目の前が小高い丘になっている。真直ぐな一本道が真ん中を貫いているのだが、歩行者も車も全く見えない。
道の左右には、無数の鳥がいた。自分の名前の由来にもなっている雲雀だとすぐわかった。雲雀たちは、とても静かに私のことを見つめている。まるで、置物のように動かない。
雲雀たちが並ぶ丘の天辺には、大きな屋敷が見えた。小説家は、ボロ家だと電話越しに謙遜していたが、とても立派な日本家屋だ。
遠目からでも、屋敷の壁や屋根に、四季折々の花が狂い咲いているのが見えた。
雲雀丘花屋敷。いや、絶対に違う。
慌てて後ろを振り返ったが、すでに駅舎も電車も跡形もなく消え去っていた。
小説家にスマホで連絡をするが、この電話は現在使われておりませんという音声が聞こえるだけで、繋がることはなかった。