姉からの手紙は、いつも思いがけないところから姿を現す。前回は、読みかけの本の間に挟まっていた。さらにその前は、窓の外側にペタリと貼り付いているのが見つかった。
手紙の内容は、いつでも旅の進捗だ。
旅が仕事でもあり、趣味でもあり、人生そのものでもある姉は、唯一の肉親である妹へ宛てた手紙の九割を旅先での経験に費やす。
ドラゴンの鱗の生食、空飛ぶ街での逃避行、墓場の幽霊たちと酒盛りをしたことなどが、面白おかしく描かれている。さすが、旅行記作者として活躍しているだけはある。
ただ、手紙の配達の仕方だけは、どうにも感心しない。切手や封筒の代金を浮かせるためなのだろうけれど、姉は手紙に仮初の命を与えて、文字通り私の家まで旅をさせる。
だから、時にシワシワになっていたり、雨に濡れていたりする。いつか注意してやろうと思うのだが、姉の居所はいつも変わるので、いまだに小言を伝えることはできていない。