俺と宮本さんは慎重に特大ウインナーを食べた。ナイフとフォークを使って小さく切り分けて、上品に。
慣れないことをしたので、けっこう時間がかかった。他のペアも同じような感じだ。食べ終えたペアは食堂に残って他の生徒と話したり、さっさと食堂を出て行ったり、それぞれ自由に行動している。
一ノ
「豪山くんって身体がおっきいけど、アレもおっきいの?」
「あれ、というと?」
「やだなぁ、とぼけないで教えてよー。アレっていうのは、学術的に言うと、おちん……」
俺は激しく咳き込み、一ノ瀬さんの下品な言葉を聞かずに済んだ。一ノ瀬さんはマジで爆弾だ。よくまだ生きてるな……。
あの人が生きていることから鑑みるに、女子が卑猥な言葉やセリフを言うだけなら、やはりラッキースケベの波動は観測されないのか……?
「ねえ佐藤くん、おちん××!」
脳内で笑顔の桃井さんがわめく。
「おっ××! お×××! お×××! 私、××××したいな、佐藤くんの可愛い×××××。ねえ、私の××××見せてあげるから、ちょっと佐藤くんの×××××も見せてくれませんか? ね? いいでしょう?」
桃井さんが絶対に言わなそうな卑猥なセリフをしゃべっているところを妄想してみた。うわぁ……。やばっ……めちゃくちゃいい……。痴女な一ノ瀬さんとペアになった豪山がちょっとうらやましい。一ノ瀬さん、頼めばどんなセリフでも言ってくれそうだし。
「佐藤? どうしたの?」
向かいに座る宮本さんが眉をひそめて俺を見ていた。妄想が中断した。
「いやっ、別に桃井さんが卑猥なセリフ言ってるところ想像してたわけじゃないから!」
俺はさりげなく右手で股間を隠した。
「……はぁ? 桃井さん?」
「え? あ、そういえば、もうみんなミッションクリアしたのかな……」
ごまかそうと思って左手でスマホを見ると一時を過ぎていた。改めてフロアを見回してみる。残っているペアは俺たちを含めて五組。伊集院慧は結局、青葉葵という、たやすく詐欺に引っかかりそうな女子を捕まえて、俺たちとは離れたところでランチをしている。
ミッションの残り時間は三十分を切っている。にもかかわらず、まだ食堂に来ていない生徒が数人いることに気づいた。
「まだ来てない人、大丈夫なんだろうか?」
正面に向き直ると、宮本さんがブスッと不機嫌そうに俺をにらんでいた。
「ええと、……どうかしたの?」
「佐藤って、あたしとデート中なのに、他の女の子のことばかり考えてる」
「考えてないって!」いやちょっとだけ桃井さんの卑猥な妄想してたけど!「というかデートじゃないってこれ!」
そのとき、
「いや! 絶対にいや!」
俺の声を遮るように、険悪な大声がした。
声のほうを見ると、食堂の入り口の辺りに生徒たちが集まって、言い争いをしているようだった。
1日目 13:01
生存者21人