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第10話

 アプリのアイコンに表示された「1」という通知が、不気味に思えた。

「何があったんだ? まさか誰か死んだんじゃ……いや、今までそういう通知はなかった」

 俺はすぐにはアプリを起動せずに、この通知の意味をあれこれと考えた。だが考えたところで分からないので、意を決してアプリのアイコンをタップする。

 アプリが開いた。

 ポップアップで文章が現われた。


【新しいミッションが始まりました】


 ミッション……? なんのことだ?

 もう一度タップすると、ポップアップが消え、日時を示す画面になった。

 上部に三つあるタブ……日時、ミッション、生存者情報のうち、ミッションのところに【NEW!】というバッジ。

 開くと、今まで何も書かれていなかったはずのところに、【ミッション1 全員必須】と表示されている。

 全員必須のミッション……つまり、ここに書かれていることをやれ、って意味なのか?

「ふざけやがって」

 俺は未だ顔の見えない主催者をののしった。

 こんなもの無視すればいい。きっと主催者はどこかで俺たちのことを眺めて楽しんでいるのではないか。だとしたら、そいつの喜ぶようなことは、何もしてやらないほうがいい。今すぐこのスマホを床に叩きつけて踏みつけて破壊してしまえばいい。

 そう思った。

 けれど……悔しいが、俺にはできなかった。

 ミッションを無視すればどうなる? 分からないが、死ぬかもしれない。生き延びなければ、桃井さんのカタキを打つこともできない。

 とにかく生き延びて、時間を稼いで、その間に黒幕を倒す方法を見つけなければ。

 俺はミッションをタップして詳細を開いた。




【ミッション1 全員必須】


※ミッションを時間内にクリアできなかった者は、死亡するので注意してください。


12時になりました。お昼の時間です。食堂に皆さんの昼食を用意させていただきましたので、お召し上がりください。


【達成条件】

食堂で男女二人一組になって一緒にスペシャルランチを完食する。


【時間制限】

1日目12:00-13:30まで

残り時間 88分



 ミッション……というより、命令。従わなければ死ぬのだから、強制である。

 食堂の場所は誰でも知っているし、どの校舎からでも行きやすい位置にあるし、制限時間にも余裕がある。

 ただ二点気になることがある。

 一つ目は「男女二人一組になって」という記述。このサバイバルゲームは誰にも関わらないようにするのが最も安全だが、このミッションはそれを許さない。意図的に男女が一緒に行動するように仕向けることで、ラッキースケベが起こりやすくしたいのだろう。それにしても、二人一組という言葉は忌々しい。しかも男女で、となると……俺とペアになってくれる女子っているのか? いなかったら死ぬなんて、主催者は極めて性格が悪い。

 二つ目は「スペシャルランチを完食する」という記述。食事は当然、俺たちの敵――ゲームの主催者が用意したもの。主催者は、こんな狂気のゲームを開催して人間が死ぬのを楽しんでいるようなクソ野郎だから、どんなものを食わせようとしているか分からない。死に至るような毒物か、あるいは精神を狂わせるような薬物が入っていたとしても、驚くには値しない。俺たちは、そんな危険すぎるランチを食わなければならない。食わなければどうせミッション失敗で、死ぬのだ。

 このミッションは無視するわけにもいかないから、俺は食堂へ向かうことにした。ただし、一階を回ってからにしよう。誰かいれば、スケベ対策の作戦を伝えるのだ。食堂までここから五分もあれば行けるので、それでも充分間に合う。

 俺はいったん食堂とは逆の方向へと、一階の廊下を進んだ。



1日目 12:05

生存者 21人


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