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第33話

 窓の外には綺麗な青空が広がっていた。今日は雲一つない快晴だ。

 相変わらず山や田んぼは青々と茂り、庭の草木は昨日の雨でキラキラと残った水滴を輝かせている。雨の後は自然の香りが強くなって、小鳥が忙しく鳴いていた。

 何気ない夏の一日だった。

 ちび達がラジオ体操に行っている間、あたしは一人で朝ご飯を食べていた。

 お母さんは仕事に行く準備をしている。洗面所で忙しく化粧をしていた。

「愛花ー。今日はどうなの? また遅くなるの?」

 昨日は随分遅くなった。あたしは努めて普通に答える。

「あー……。うん。多分」

「じゃあごはんは?」

 いらないと言いかけて、やめた。今のあたしのってはそんな予定でも欲しかった。

 それが今夜でも未来に生きていたかった。

「……遅くなるかもしれないけど、うちで食べるよ」

「そう。じゃあ冷蔵庫に入れておくからチンしてね」

「うん」

「よし。できた。いってきま~す」

 お母さんは慌ただしく家を出ていった。

 誰もいない家の居間であたしはぼそりと呟いた。

「いってらっしゃい」

 少しずつ日が昇っていく中、蝉が鳴き出した。

 今日も暑くなりそうだ。


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