「お、二条と小日向じゃん。お前たちも来ていたんだな」
「まあね。それにしても……君たち、最近やけに仲がいいね」
縁士はそう言うと、俺たちをしげしげと眺める。その隣で紫音も小さく頷いていた。
「確かに……最近、よく四人で一緒にいるところを見かける気がしますね!」
紫音は興味深そうに俺たち三人を見つめながら言った。それに対し、俺は「うん、まあ……何かと気が合うんだよね。俺たち」と曖昧に返しながら苦笑する。
考えてみれば、不思議な組み合わせだ。俺は元々目立たない陰キャという立ち位置だったし、孝輝も陰キャというほどではないがそんな俺とつるんでいる変人だと認識されていた。凪沙もどちらかと言えば引っ込み思案な性格で、あまり他人との交流が多くない。
そして、何故かそんな俺たちと一緒にいることが多い世羅は、学校一の美少女でいつも誰かしらに囲まれているような、まさにスクールカースト上位者である。
そんな俺たちが行動を共にしているなんて、傍から見たら奇妙に映っているのかもしれない。
「ところで……君たちはこれから縁日を見て回るの?」
縁士がそう尋ねると、すぐに孝輝が答える。
「ん? ああ。そうするつもりだけど……」
その言葉に、縁士と紫音は顔を曇らせる。一体どうしたんだろう? と首を傾げていると、やがて縁士が意を決したように口を開いた。
「それなら、気をつけたほうがいいかもしれないよ。……さっき、この辺りで高嶺さんたちを見かけたから」
「え? 高嶺さんたちが……?」
思わず聞き返すと、紫音が補足するように言った。
「実は……私たちが夏祭りに来た理由は、クラスメイトが羽目を外して変な真似をしないように巡回するためなんです。特に、高嶺さんたちはクラスの中でも悪目立ちしているグループなので。現にこの間、高嶺さんは由井君に濡れ衣を着せて陥れようとまでしていましたし……」
「なるほど。でも……高嶺さん達はともかく、他の人たちはそこまで問題行動を起こすような人たちじゃないと思うんだけど」
俺がそう返すと、縁士は首を横に振った。
「いや、それがそうでもないんだよ。教師たちが話しているのを偶然聞いたんだけど、ここ最近学校に苦情が来ているみたいなんだ。なんでも、喧嘩を吹っかけたり恐喝をして財布を奪ったりする生徒の姿が頻繁に目撃されているとか……。制服から察するに、うちの学校で間違いないだろうって。だから、うちのクラスの誰かが悪さをしている可能性もあるんだ」
「まさか……」
驚いて声を上げると、紫音が言葉を引き継いだ。
「でも、学校側はあまり問題視していないみたいなんです。というのも……どうもその生徒の親が権力者みたいで、事件を揉み消しているらしいんです。あくまで噂なので、真偽は定かではありませんが……。そんなわけで、私たち学級委員が目を光らせようかという話になりまして」
紫音がそこまで話したところで、縁士がやんわりと遮った。
「とにかく、君たちも気をつけてね。それじゃあ、僕たちは見回りがあるからこれで」
「あ、うん。ありがとう」
縁士と紫音は軽く手を振ると、俺たちに背を向ける。そして、人混みの中へと消えて行った。