凪沙も凪沙で、「友人として接してほしい」と希望していた割には独占欲のようなものを醸し出している気がする。
……女心というのは、思いのほか複雑なようだ。
釈然としないものを感じつつ、俺は静かにため息を吐いたのだった。
次の瞬間、不意に背後から声をかけられる。
「あれ? みんな揃ってどうしたんだ?」
俺たちは、思わず声がした方向に振り向く。視線の先にいたのは、孝輝だった。
「え? 孝輝……?」
驚きつつも、俺は簡単に経緯を説明した。話を聞き終えると、孝輝はうんうんと納得したように頷いた。
「なるほど。それにしても奇遇だな」
「ていうか……孝輝はなんでこんな所にいるんだよ?」
来週には期末テストが控えているし、普通ならゲームセンターで遊ぶような余裕はないはずだ。
「いや、俺は普通にゲームがしたかっただけだよ。この辺だと、このゲーセンが一番規模が大きいからな」
孝輝はそう言うと、レーシングゲームの方へと目をやった。
そういえば、彼はああいうゲームが得意だったなと思い出す。
「へぇ……でも、テスト勉強は大丈夫なのか?」
俺が尋ねると、孝輝は「まあな」と軽く返す。
「俺は、普段からちゃんと勉強しているからな。そうそう赤点は取らないよ」
「あれ? そうだっけ?」
肩を竦めながら言う孝輝を見て、俺は首を傾げる。彼とは中学の頃からの付き合いだが……俺の記憶が正しければ、どちらかと言えば勉強嫌いで何度か赤点を取っていたイメージがあったからだ。
そんなことを考えていると、孝輝は戯けるように軽く両手を広げる。
「おいおい、湊! 心外だな! 俺、こう見えて赤点は二回しか取ったことがないんだぞ?」
「なんだよ。結局、赤点取ったことあるんじゃないか」
突っ込みを入れると、孝輝は「う……」と言葉に詰まる。
「いや、それは……まあ、うん。でもな、今回はテストの点数が良かったら姉貴がゲームを買ってくれるっていうから勉強頑張ったんだよ。だから、ゲーセンに来たのはちょっとした息抜きというか……」
「ああ、なるほど。そういうことだったのか」
孝輝には、
面倒見が良い姉御肌な性格で、俺も昔から色々とお世話になっているのだ。
ちなみに……孝輝がゲーム好きになったのは、紗菜さんの影響もあるらしい。
「まあ、そういうわけだから……俺はしばらくここで遊んでいくわ。湊たちはどうする? 一緒に遊ぶか?」
「ああ、そうだな。せっかくだし……」
「テスト前でみんな勉強している中、こうやって遊ぶのはちょっと罪悪感があるけど……息抜きも必要だよね」
隣にいる世羅が納得したように頷いている。凪沙も異論はない様子だ。
そんなわけで、俺たちは四人で遊ぶことになったのだった。