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11.ゲームセンター

「だ、大丈夫!?」


 世羅が目を丸くしているのを見て、俺は慌てて平静を取り繕う。


「……ご、ごめん。気にしないで」


 そう返すと、俺は苦笑しながらスマホを鞄にしまう。

 それから、俺たちは他愛のない話をしながら食事を続けた。


 食べ終わると、早速テスト勉強を始める。

 お互い苦手な科目の問題を出し合ったり、あの授業の内容ならきっとこの問題が出るだろうと予想をしたりしながら勉強を進めた。


「えっ……!? すごい! もう問題解けたの?」


「うん、一応ね」


 よく考えてみれば、自分はタイムリープをしている。

 だから、高校卒業程度の知識をすでに得ているのだ。難なく問題を解くことができたとしても、何ら不思議ではない。

 とはいえ、世羅の方も大方解けているようだ。流石、学年トップである。


「ていうか……湊君のノート、すごくわかりやすいね!」


 ノートを覗き込んできた世羅が羨望の眼差しを向けてくるので、「そんなことないよ」と否定する。


「湊君はもっと自分に自信を持ったほうがいいと思うよ。すごく努力家だし、絵も上手いし……なかなか真似できないよ」


「え、いや……」


 世羅があまりにも褒めてくれるものだから、俺は思わず照れてしまった。そんな俺を見て、彼女はくすくすと笑っている。


 そんな彼女の笑顔に見惚れながらも勉強を続けていると、いつの間にか時間が経っていた。

 世羅がそろそろ帰ろうかと言ってきたので、会計を済ませ二人で店の外に出る。夏だからなのか、外はまだ明るかった。


「ねえ、せっかくだから少しだけ寄り道していこうよ」


 不意にそう提案してきた世羅に面食らいながらも、俺は頷く。


「え? うん。いいけど……でも、どこに?」


「ゲームセンターに行こうよ!」


 軽やかな足取りで歩き出した世羅の後を、俺は慌てて付いていく。

 そして、言われるがまま電車に乗ると、あまり馴染みのない駅に到着した。


「すごい! たくさんあるね」


 着いたそこは、学校の近くにあるゲームセンターよりも規模が大きかった。

 世羅は、目を輝かせながら店内を見渡していた。


(……なんか、子供みたいだな)


 そんな世羅を微笑ましく思いながら、俺は彼女と一緒にクレーンゲームのコーナーに向かう。

 すると──


「あれ……?」


 ふと、クレーンゲームの筐体の前に見覚えのある後ろ姿を見つけた。


(あれは……もしかして、凪沙……?)


 あの一件以来、凪沙とは付かず離れずのちょうどいい友人関係を保っていた。

 というのも、彼女自身が「気まずくなるのは嫌だから、友達としてこれからも程よい距離感で付き合ってほしい」と申し出てきたのだ。

 同じクラスだから接する機会は多いが、俺たちは特に気まずい空気が流れることなく交流していた。


(でも、俺と世羅が一緒にテスト勉強をするようになってから何だか様子がおかしいんだよな……)


 隠そうとしているようだけど、どことなく彼女がぎくしゃくしていることくらいは鈍感な俺にもわかった。

 そのせいか、俺は何だか気まずい気持ちになりながら凪沙を眺めていた。

 次の瞬間、隣にいる世羅が呟いた。

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